第4話時間稼ぎ
俺は馬車の中でアルティア様にこの世界のことを色々聞いていた。
ちなみに俺の設定は山奥で爺さんと過ごしていたが爺さんが死んでしまって森から出ることにした世間知らずの若造ということにしている。
「アルティア様、俺身分証持ってないんですが街に入れますかね?」
「その事なら私があなたの身分証明してあげるから大丈夫ですよ。
でも街に着いたらギルドに行ってギルドカードを作ってもらってください。
人間の社会で生活するには身分証は何処にでも必要になりますから」
「はい、わかりました。
ありがとうございます」
「いえいえ、大丈夫ですよ。
困った時はお互い様です。
あなたも私が困った時に助けてくださいね」
アルティア様が笑いながら言うが、その言葉に裏を感じてしまう。
「ん?」
何か今変な空気を感じた。
「どうかされましたか?」
「すみません。
少し静かにしてください」
俺はそう言って馬車の窓を開け周囲の気配や音に集中する。
ダダダッ
やっぱり遠くの方から大勢の人の足音や馬の足音が近づいてくる。
俺は慌てて扉を開け近くにいた護衛の人に声をかける。
「そこの護衛の人!」
「はい、なんですか?」
「南の方向から大勢の人が向かってきてます!
盗賊の可能性もあるので注意してください!」
「え?盗賊ですか?」
そう言って護衛の人は南の方へと視線を向ける。
「何も見えませんし音も聞こえませんよ?
勘違いなんじゃないですか?」
まあ、それが普通の反応だろう。
でも、確実に音は近づいて来ている。
どうする!?
なんて伝えればわかってくれる!?
俺は護衛の人を説得できるような言葉を探す。
「トウマ様。
その話しは本当なのですか?」
俺が必死に考えていると馬車の中から真剣な顔をしたアルティア様に声をかけられる。
「え?
あ、はい!
本当です。
盗賊とは断定できませんが、大勢の人が近づいてきているのは間違いありません」
「わかりました。
あなたを信じましょう。
馬車を止めてください」
アルティア様は椅子から立ち上がり、馬車を止めるように言う。
そして、アルティア様は馬車から降り護衛の人達に語りかける。
「護衛の皆さん。
南の方から大勢の人がこっちに向かって来ているそうです。
この人を信じて対策を信じて対策を取りましょう。
もし、何も無くてもいいではありませんか。
それよりも恐ろしいのは事前に敵が来ることを教えてくれている人がいたのにも関わらず、その人の話しを信用せずにいた結果、本当に敵が来た時に何も対策なしで挑んでしまい、不必要な被害を出してしまうことではありませんか?」
最初は不愉快そうな顔をしていた護衛達もアルティア様の話しを聞いてどんどん真剣な顔に変わっていく。
「そうですね。
皆の者!
戦闘準備!」
「「「「了解!」」」」
それから五分程が経過した。
護衛人達がやっぱりガセの情報だったのではないかと気を緩め出したその時、土煙と共に多くの人達がこちらに向かってきているのが見えた。
「本当に来ましたね」
俺の横にいたアルティア様が呟く。
「盗賊が来たぞ!
迎え撃て!」
「「「「はい」」」」
そうして護衛の人達、約十五人と盗賊、約二十五人との戦いが始まった。
俺はというとアルティア様を守るように頼まれたので護衛二人と一緒にアルティア様の近くで待機している。
ダダダッ
次は護衛の人達と盗賊が戦っている反対側から足音が聞こえてきた。
「アルティア様!
次は後ろから敵が来ます!」
「本当ですか!」
「恐らく、今護衛の人達と戦っている盗賊は陽動で今後ろから向かってくる人達が本命でしょう。
私が相手するので、アルティア様のことをお願いします」
「ちょっと!」
俺は護衛の人が何か言いたそうにしていたが無視をし、護衛にアルティア様のことを任せ俺は本命と思われる盗賊達に向かって走る。
直ぐにお互いがお互いのこと視認出来る距離になる。
「チッ!
気づかれていたか。
だが相手は一人だ素早く殺して本命の所に行くぞ」
「「おう!」」
そう言って三人の盗賊達は俺に向かってくる。
「さすがに三人はきついかもな」
俺も真っ黒な刀身の刀を抜き応戦する。
これはやばいな。
こいつら雑魚じゃない。
数回剣を交えただけでこいつらに多少の剣の技術がある事がわかった。
これは倒すのは無理そうだな。
護衛の人達が応援に来てくるまでの時間稼ぎにてっするか。
三人全員の攻撃を踊るかのように交わしていく?
「チッ、このままじゃ拉致があかねぇ!
おい!
お前ら二人先に標的の方へ行け!」
「「はい」」
盗賊の中の二人が俺を無視してアルティア様の方に向かおうとする。
「行かせないよ」
俺はその二人の前に回り込む。
「クソが!
囲め!」
三人が俺を囲み身動きが取れなくなった。
「やばいな。
まあ、もう俺の仕事は終わりのようだけどな」
「なに?」
「よく時間稼ぎをしてくれた!
あとは俺達に任せろ!」
南の方で戦が終わり、護衛の人達がこちらの応援に来てくれた。
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