エピローグ

 放課後になって、内海と原と別れてから、一人で、雨の中を帰る。

 今日の夕飯当番は舞香さんだから、スーパーに寄る必要もない。

 ゆっくりとした歩調で、家を目指して。

 ノクターンを聴きながら、歩き進んでいたら、


「危ない!」


 と女性の声が聞こえてきて、


「——え?」


 次の瞬間には、ハイエースが、右から左に。


「——危なかった」


「うわぁ……」振り返ったところにいた、僕の手を握る女性に、「ありがとうございます、危なかった、死んでましたね今の」


 その人は、僕の顔を見て、


 ――どうしてか、泣いていた。


「あれ?」


 それから、自分も泣いているのが、わかって、


「なんで? あれ?」


 彼女は泣きながら、それでも笑って、


「生きててよかった。——三回目」


 と、言った。

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時の子ども 枕木きのこ @orange344

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