45億年ぶりの再会
ひのきあす
わたしときみ
ずっと、ずっとむかし、わたしたちは、ひとつだった。
あるとき、わたしときみは、わかれてしまった。
わかれてしまったときから、わたしときみとのあいだは、はなれていく。
それから、わたしはずっときみをみていた。
わたしはなにもかわらなかったけれども、きみにはいろいろなへんかがおこった。
はじめに、きみのいろがかわった。
あおいろになったのだ。
わたしと、きみとのあいだは、さらにはなれていく。
つぎに、きみのもとにはいのちがたんじょうした。
いのちはせいちょうし、きみをおおう。
よわいいのち、つよいいのちがふえて、へってをくりかえした。
そのなかに、ひとがいた。
ひとは、わたしをみつめる。
わたしをみて、かみとあがめた。
わたしにも、いのちがいるのではと、かんがえた。
ひとはきみのもとからとぶ。
わたしは、わからなかった。
なぜ、きみのもとからでていこうとするのか。
きみのもとからとびだしたひとは、わたしにちかづく。
かれらのかおをみて、わたしはきづいた。
そのかおは、とおいむかしにわかれたいとしいものに、
であえるよろこびであったことを。
わたしが、きみをみつめているときとおなじなのだ。
きみとわかれてから、わたしはずっと、寂しかった。
きみも、おなじことをおもっていてくれていたのだね。
きみからうまれたひとは、きみとおなじ。
ながいときをへて、わたしのもとにあいにきてくれた。
ひとがわたしのもとにおりたつ。
――ああ、やっとあえたね。
――愛しき君よ。
――わたしたちはひとつだ。
西暦1969年。7月20日。
人類、月面に降り立つ。
それは、45億年前に分かれた地球と月との再会ともいえるだろう。
45億年ぶりの再会 ひのきあす @16hinokiasu07
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