あなたも女の子に看取られよう!

この作品の主人公は、作品を読むあなた自身です。

今際の際のあなたを、毎回違う女性が看取ります。文章は女性があなたに話しかける形でつづられていきます。ある時には電車の中で女子高生に呼びかけられながら死に、ある時には先輩に「諦めるな」と励まされながら死に、またある時には……といったように、あなたは様々な「最期のシチュエーション」を作品を通して体験していくことになります。

死を描いたこの作品ですが、基本的に恐怖はありません。感じられるのは、切なさや、むなしさ、寂しさといったような、どこか心が締めつけられるような感覚。ですが、いわゆる「泣ける話」のようなタイプの劇的さはありません。
それがとても良いんです。われわれが死ぬ時って、エンタメ重視の物語のような感動的な終わりを迎える可能性は低くて、現実的には、もしかしたらよくわからない場所でくだらない理由で死ぬのかもしれない。本作であなたが体験する死はそんな、物語よりは現実的な死です。
でも、そこにはひとつの奇跡がある。
死に際、傍らに女の子がいること。
あなたはリアリティのある死を味わいながらもすぐそばに女の子がいて語り掛けてくるという、甘美とまではいえない、それでも不思議な夢のような体験をすることでしょう。

本作読了済みの私は計10回臨終しましたが、たいへん心地よかったです。こんな娘たちに看取られたいな。おすすめです。