荒廃した都市で、危険な麻薬を根絶やしにせんと奮闘する音楽家、アキハルの戦いの物語。
その他です。ジャンルの「詩・童話・その他」のうちの最後、「その他」の名に恥じないこの規格外っぷり。一応はサイバーパンクSF的なお話、ということになるのかもしれませんが、でもそういう真っ当な区分がどうでも良くなるくらいにはぶっ飛んでいます。すべてが。
何がすごいってもう文章の勢い、特に怒涛のルビ芸です。
どこにも正気が見当たらない、いわば文章の形をした異常性の塊。オリジナリティ、なんて言ってはかえって安っぽく受け取られてしまいそうですが、でもこの作品を噛み砕いて説明するのに、ただ「アキハル」と呼ぶ以外にどうしようもないところが強烈でした。なんだこれは……いや本当に何……? 夢……?
さりとて、ただ滅茶苦茶にぶっ飛んでいるばかりではなく、しっかり物語があるのが素敵なところ。
最後なんか本当にしんみりきたりして、その高低差っていうかギャップに見事にやられました。どうにも説明できないんですけど、とにかくパワーのある作品です。パワーこそパワー。
第1話を開いた瞬間、あなたは理解するでしょう。これは(ディス・イズ)、ヤバイ(ルナティック)。
違法薬物が自販機で買えるレベルのめちゃめちゃ治安の悪い地域に、主人公アキハルが降り立ちます。
右手に持つのは全自動掃射砲(ガトリングガン)、左手で構えるのは弦楽鈍器(ヴァイオリン)。
そう、見ての通り(?)彼はミュージシャン。
しかしながら、薬物をこの世から根絶するため、麻薬組織との戦いに明け暮れる〝真の男(トゥルー)〟なのです。
本作の特徴は、文章にあてられたルビが多くてなおかつそのルビが面白いこと。第1話を読むだけでわかりますが、読みにくすぎるなんてことはなく、そのルビの多さが癖になっていきます。
第2話以降も言葉選びが最高に独特で面白いので、それに惹かれて読んでいるうちに続きが気になり始めます。バトルものらしいあっと驚く展開もあり、そしてラストのアキハルの啖呵は熱く、思わず泣かされるところでした。笑えるだけじゃないトゥルー・ソング。未来への希望を歌う物語です。