この物語は、文学を研究するためにスイスに来た女性の物語です。会社勤めをし始めた恋人と、実学ばかりを見てきた母親の言葉が、私にも言われているようで胸に突き刺さりました。けれど、「一人前になるんだ」と決める主人公の姿が、とても力強かったです。何か新しいことを始める時に、読んでみたらいかかでしょうか?
実に秀抜な旅行紀であり成長紀である。手に取るように把握できる情景描写、離陸と着陸で入れ替わる主人公の人生、そして白紙そのものの未来。 祝福を惜しまない。
確かな筆力で描かれる、海外留学のワンシーン。情景にリンクする心情が、お話に深みを出しています。私はこの物語を読んだ時、はっとさせられました。私はこれまで、これほどの覚悟を持って、立ち向かっていったことがあるだろうかと。迷いがある人にこそ読んでほしい一作です。
ドイツに留学すると決心した主人公。恋人との関係、母親との関係、煩雑な手続き。様々なことを乗り越え、ついに……主人公にとって大変なことは、きっとこの先なのでしょう。けれど、どこか爽やかで確かな希望も感じさせてくれる物語でした。
「チューリヒ国際空港」とページのタイトルにあります。飛行機を乗り換えるためにやってきたのですね。そのほんの45分の滞在の間にそれまでの思いがあふれ描写されます。これから留学して何年間かをすごすことになることを考えればほんの一瞬の通過点。いままで苦労して歩いてきた道の途中にすぎない場面を勢いよく動く主人公にくっついて駆け抜けます。広い世界へ、明るいほうへ。