この物語は、文学を研究するためにスイスに来た女性の物語です。会社勤めをし始めた恋人と、実学ばかりを見てきた母親の言葉が、私にも言われているようで胸に突き刺さりました。けれど、「一人前になるんだ」と決める主人公の姿が、とても力強かったです。何か新しいことを始める時に、読んでみたらいかかでしょうか?
実に秀抜な旅行紀であり成長紀である。手に取るように把握できる情景描写、離陸と着陸で入れ替わる主人公の人生、そして白紙そのものの未来。 祝福を惜しまない。
確かな筆力で描かれる、海外留学のワンシーン。情景にリンクする心情が、お話に深みを出しています。私はこの物語を読んだ時、はっとさせられました。私はこれまで、これほどの覚悟を持って、立ち向かっていったことがあるだろうかと。迷いがある人にこそ読んでほしい一作です。
ドイツに留学すると決心した主人公。恋人との関係、母親との関係、煩雑な手続き。様々なことを乗り越え、ついに……主人公にとって大変なことは、きっとこの先なのでしょう。けれど、どこか爽やかで確かな希望も感じさせてくれる物語でした。
「チューリヒ国際空港」とページのタイトルにあります。飛行機を乗り換えるためにやってきたのですね。そのほんの45分の滞在の間にそれまでの思いがあふれ描写されます。これから留学して何年間かをすごすことになることを考えればほんの一瞬の通過点。いままで苦労して歩いてきた道の途中にすぎない場面を勢いよく動く主人公にくっついて駆け抜けます。広い世界へ、明るいほうへ。
夏って特別な季節だと思うのです。開放的になったり、活動的になったり。そしてなにかを「決める」季節だったり。夏と聞いて思い浮かべることは人によっていろいろあるとは思いますが、これもまた「夏」だなぁと感じる作品です。自分がしたいことを、一生懸命に頑張っている人って素敵ですよね。思わず応援したくなります。本作の主人公も、自分の人生を頑張っている女性です。彼女の思いが夏に眩しく咲くように。そう応援せずにはいられませんでした。ぜひこのお話を読んで、あなたも応援してください。オススメです!
同音異話の自主企画に参加されている作品だと思うのですが、このタイトルからこういった物語を生み出す作者様の発想や感性が素敵だと感じました。とても大変な準備を整えて、留学するために海外へ旅立つ女性の姿を描いた作品です。眩しく咲いた彼女の夏思いが、彼女が帰国するときにはさらに美しく満開になっていればいいな、と応援したい気持ちでいっぱいになりました。新しく一歩を踏み出す勇気を持てない方の背中を押してくれるような、素敵な作品です。
煩雑を極める留学準備。研究者の主人公と会社員の彼との感覚のズレ。そして空港ダッシュの緊迫感。描かれているのは、留学先に向かうフライトとそこにたどりつくまでの回想――なのですが、なんでしょう。手に汗握ります。主人公の思いがとてもリアルに、ダイレクトに伝わってくる。いってらっしゃい! がんばれ――!そう声援を送らずにはいられない。とても素敵な夏思いが咲きました。
全部一気に読みました。きわめて新鮮。そして、読みやすい。言葉選びも巧みで、テンポもいい。主人公の心情、焦り、邁進さが丸裸で伝わってきます。設定に目立った抜かりもなく(何様)、完成度は非常に高く思いました。《黙って私の話を聞いていた彼が通話を切ってから、虚無感と安心感で、久方ぶりに頭の中がぽっかりと空っぽになった気がした。》自分はこの一文にとても重みを感じました。夢に進むことを決めた彼女の野心が見え隠れする一文といえますね。