またか。また多くの読者を混迷の中へと引きずり込む気か。

 ふふ、いつもの水沢ではないか。冒頭、私はそう思った。
 これは面白くなるぞと。

 パンツを食す事を是とする男、水沢。その目の前には忘れ物として届けられた女性物の水着。
 あぁ、また口に運ぶか、水沢。いいぞ、やれ! やってしまえ!
 という私の期待は大幅に裏切られた。とても悪い意味で。

『着てみたい』

 なんだと……?
 水沢ともあろう超弩級変態が、「着てみたい」などという極めて陳腐な欲望を吐き出しただと?
 水沢という存在に何故か心を囚われてしまっている私にとっては強烈な肩透かしであった。

 あぁ、なるほど。
 前作『君のパンツを食べたい』で水沢は二年生。今作では一年生。まだ水沢の変態性が本格的に開花する前の話なのか。
 つまり作者は真の水沢への誘導としてこの短編を公開したのだな。

 そう決めつけた私は、既に一本釣り漁の撒き餌に惹き付けられたカツオの一匹であった。他の多くの読者様と同じように。

 本当に、浅はかであった。パンツイーターと化した二年生の水沢の変態度を100とすれば、水着を着てみたいと「相手に伝え、その相手から何かを引き出そうとする」という奸計を巡らす水沢の変態度は既に95程に達していたのだ。

 あぁ、また負けた。
 私はまだ完全体ではない水沢にすら敗北を喫してしまった。

 本作を読んでいないのなら、是非読んで試してみて欲しい。
 あなたの想像力が、水沢の恐るべき変態力に勝るかどうかを。

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