変態哲学者の水沢くんが、夏になってその本領を発揮してくれます。
水沢くんと水着という組み合わせが、もう時限爆弾級にデンジャラスです。
そこに生徒会室と夏休みというシチュエーションが組み合わさればもう、フィールド補正効果で変態シンクロ率400パーセントを軽く突破してしまいます。
しかも冒頭から、「女性物の水着着てみようかな?」と豪語する生徒会長まで登場する始末。
みずさわは へんたいのなかまをよんだ!
どくしゃは へんたいにまわりをかこまれた!
にげられない!
というわけで、もう掴みはばっちり。読者にブラウザバックを許しません。
しかしもう、このパンツ濡れ濡れ言葉攻め野郎の計略の深さは、かの諸葛孔明も驚きを禁じ得えないレベルです。ペルソナとか代償行動とかそれっぽいことを言って、ちゃっかり相手を誘導していく。なんて計算高い変態なんだ……。
そして終盤は、作者様の迸るフェチズム描写が、読者の新たな性癖の扉を力づくでこじ開けてくれます。まるで、真夏の夜空に炸裂する花火のスターマイン。怨念にも似た気迫が伝わってきます。
でも変態的なのに、なぜか同時に爽やかな読後感を得ることもできるから、とても不思議。ちゃんと青春小説として成立しているのです。そんな馬鹿なですよ。なんだかずるいよ! 悔しいびくんびくん!
きっと私たちも、水沢くんにのせられた二ノ宮先輩同様、作者様の巧みな筆力によって、意のままに操られてしまっているのかもしれません。
その見事な手腕に、万雷の拍手を送りたいです。今すぐ水着が着たくなってきてしまいました。いかん水着は、スク水はどこだああ!!(惑乱)
ふふ、いつもの水沢ではないか。冒頭、私はそう思った。
これは面白くなるぞと。
パンツを食す事を是とする男、水沢。その目の前には忘れ物として届けられた女性物の水着。
あぁ、また口に運ぶか、水沢。いいぞ、やれ! やってしまえ!
という私の期待は大幅に裏切られた。とても悪い意味で。
『着てみたい』
なんだと……?
水沢ともあろう超弩級変態が、「着てみたい」などという極めて陳腐な欲望を吐き出しただと?
水沢という存在に何故か心を囚われてしまっている私にとっては強烈な肩透かしであった。
あぁ、なるほど。
前作『君のパンツを食べたい』で水沢は二年生。今作では一年生。まだ水沢の変態性が本格的に開花する前の話なのか。
つまり作者は真の水沢への誘導としてこの短編を公開したのだな。
そう決めつけた私は、既に一本釣り漁の撒き餌に惹き付けられたカツオの一匹であった。他の多くの読者様と同じように。
本当に、浅はかであった。パンツイーターと化した二年生の水沢の変態度を100とすれば、水着を着てみたいと「相手に伝え、その相手から何かを引き出そうとする」という奸計を巡らす水沢の変態度は既に95程に達していたのだ。
あぁ、また負けた。
私はまだ完全体ではない水沢にすら敗北を喫してしまった。
本作を読んでいないのなら、是非読んで試してみて欲しい。
あなたの想像力が、水沢の恐るべき変態力に勝るかどうかを。