おかしさの向こう側は……やばい深淵

ゾンビをこよなく愛し、クラスメイトにも押しつけたあげく「ウェスカー」なんて呼ばれることになった11歳の少女、花宮あんず。塾の帰り夜道、彼女は変質者に襲われて、そしてある女性に救われる。――素肌にコートをはおっただけの痴女にして熱烈なあんずのストーカーである女性警察官に! かくてあんずと痴女の闘いが幕を開ける!

主人公のあんずさんからしてなかなかやばいです。そして作中で「痴女」と表記される女性警察官は深刻にやばいです。ついでに2話で登場するあんずさんのお友だちも酷くやばいんです。

マイナスにマイナスをかけるとプラスになりそうなものですが、そうはさせないのが著者さんの筆。基本的にはライトタッチでドタバタなのに、オブラードに包まないやばさが“迫力”になって、それが絶妙な後味の悪さを生む。文章という媒体ならではの錬金術が、これでもかってくらい味わえるのが最大の魅力なんです。

蒸し暑い夜にうってつけの、涼感系恋愛(?)小説です。

(「暑いからむしろ濃厚!!」4選/文=髙橋 剛)