第26話 旅館

「レンさん……」


「何……」


「これが旅館……」


「あぁ……そうらしいな……」


「何か……おとぎ話に出てきそう……」


「始めてお前に共感したわ……」


レンとシロウが見上げる巨大な建物。

水中の中に赤く神々しい光を放つ提灯が左右を彩る。

鳥居が何重にも重なった先には

【竜宮城】と書いてある大きな門。

緑色の屋根の下には赤い柱に白い壁。窓は幾つもあり、それぞれ明かりがついていたり消えていたりしている。

その建物が何重にも重なっている用だ。


「何してるのよ……早く行くわよ……」

カレンが数歩先でそう言い後ろを振り向く。


「カレンちゃん、この建物見てビックリしないの?温泉旅館って聞いてたんだけど?何で水中にこんなでっかい建物があるわけ?本当に温泉あるの?ねぇ?ねぇ?」


カレンは呆れた様子で言う。

「アンタって本当にバカね。旅館って海の中にある旅館と火山付近にある旅館の2種類があることを知らないの?これぐらい常識でしょ、ねぇ?レン」


え、全然知らなかったんだけど……

ヤバイ、俺が馬鹿シロウと同じ反応をすれば俺の立場が……

「ん?あっ、当たり前。常識だろ」


レンさん、嘘下手だな……


「そうよね。こんな常識も分からないの?」


「何で騙されてるの……!?」


「いいから早く行きましょ。」


3人は何重もの鳥居をくぐり抜けシロウが竜宮城と書かれている大きな門を力いっぱいに押した。

「んん?レンさん、開かない……」


「お前の力が無いだけじゃ……」


シロウが顔を赤め再び力いっぱいに押す。

「ファイッ!とぅぉぉぉぉおおぉぉぉおおッ!!」


顔を下げ膝に手をついた

「ちょ……レンさん……開かない……んですけど……ヴェ……ゴホゴホ」


コイツはやっぱり体力が無い。こんだけでこんなに汗だくになるなんて普通は出来ない。


カレンがシロウを横目に門の前に立つ。


「カレンちゃん……本当に……開かな

い……」


「これ……」

カレンが大きな門の隙間に手を入れる。

「引き戸よ」


ガラガラガラ

玄関の扉を開くような音で簡単に門がスライドされた。


「ようこそ!!いらっしゃいませ!!」

元気な様子でチャイナ服の女性2人が扉を開けると立っていた。

カレンが女性に近付く。

「確か予約してたと思うんだけど、男2人女1人で。多分ルークさんのサインか何かが入ってると思うわ。」


「確認致しますので少々お待ち下さい。」

そう言い1人の女性が懐からメモ帳のような物を取り出し確認している。


すると小声でシロウが俺に話しかけてきた。

「レンさん……」


「今度は何……」


「カレンちゃん凄いですね……」


「そうだよな。確かに慣れてるみたいにテキパキしてるよな……」


「いや、そうじゃなくて……」


「ん?……」


「男2人女1人って自分が女だっていう自覚があったんですね。てっきり男3人で予約してると思ってぃたぃぃいたぃ痛い痛い痛い痛い痛いッ!!チョットマッテッててて!嘘だってッッ!今のは嘘だってぇぇぇえ!!」


「全部聞こえてるのよ」


「カレンちゃんっ!!チョッ!!マジで死ぬから!!ダカラ離してッてぇえ!!ヘッドロックしないでぇぇえ……えぇ……」


シロウ……今までありがとう……


「確認取れました!レン一行様ですね。お部屋にご案内させて貰います!」


そう言い、俺達は赤いカーペットの大きなロビーを通り階段を上がって605室に案内された。


「こちらがお部屋にございます」

受付の女性が木の扉を開くとそこには畳が敷いており10畳ぐらいの大きさの部屋だった。

真ん中には机があり、座布団が4つ程広がっていた。

シロウが勢い良く畳にダイブする。

「わぁぁい!!こんなの始めてですよ!!嬉しいです!!ねっ!!そう思うでしょカレンちゃんも!!」


「子供みたいね……まぁでも、たまにはいいんじゃない」


「そうだな……まぁ羽を伸ばしに来たんだし、ゆっくりしようぜ」


3人が部屋に入ると女性が

「ではごゆっくりと。温泉は一階のロビー東に男湯と女湯で別れております。午後22時を過ぎれば入れませんのでご注意を。夕食は午後18時から朝食は午前8時に二階の食堂にてバイキングがありますので遅れないようにお願いします。」

と言い扉を閉めた。


「えぇっと今は……」

俺は掛かっていた時計の針を見た。

「昼の4時だから……後2時間か……」


「カレンちゃん!レンさん!こんなのいいですね!俺こういうの始めて何ですよ!」

シロウがそう言い仰向けに手を広げる。

「師匠に拾われてからずっと山に籠ってたので憧れてたんですよね……。友達を作って泊まったり遊びに行ったりしたいなって……。」

シロウが少し顔を下げる。


「アンタ……」

カレンが少し表情を優しくする。


「あっ!ごめんね!何かしみじみさせて!俺こういうの慣れてなくて。えへへ……」

シロウが笑顔で起き上がり頭をかく。


カレンがその言葉に答えるように口を開く。

「私達を友達だって思ってたの!?」


「今そこツッコむとこじゃないでしょカレンちゃん!!」


「アンタは私の部下じゃないわけ?」


「誰がそんな契約交わしたの!?それに……」



レンは手をつき足を伸ばし天井を見上げる。


はぁ……平和だな……

まぁ……たまにはこんなのもいいか……











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