僕はきっとこの作品に出会いたかったんだ

この作品を読んでいると、相反する2つの思い―ジレンマが起こってくる。
1つは、続きが気になって気になって仕方がない、一刻も早くページをめくりたい、という思い。
そしてもう1つは、何度も何度も読み返したい、永遠にこのページを見続けていたい、という思い。
その2つの思いを両立させるだけのものが、この作品にはある。
ネタバレになるので詳細は避けるが、主人公の2人はあるきっかけによって己の運命と対峙せざるを得ない状況へと追い込まれていく。
文章構成の妙によって、予め最終的な結果「だけ」がわかっている我々読者は、どうしてそうなるのか、本当は何があったのかということを、知らずにはいられない。だから続きが気になって仕方がない。
と同時に、登場人物一人一人の心の内が、その抱える苦悩が告白され、それは我々の心を深く深く抉り、人として生まれた者全てに問を投げかけ、足を立ち止まらせる。美しい文章とも相まって、何度も何度も咀嚼するように繰り返し読まずにはいられない。
衝撃の事実を突き付けられて、いったい何度鳥肌が立ったか。自身ですら意識していなかった心の最奥に言葉を突き立てられ、何度涙したことか。
この作品を生み出してくれた作者様と、この作品に出会えた縁に、精一杯の感謝を。
僕はきっと、この作品に出会いたかったんだ。