この作品を読んでいると、相反する2つの思い―ジレンマが起こってくる。
1つは、続きが気になって気になって仕方がない、一刻も早くページをめくりたい、という思い。
そしてもう1つは、何度も何度も読み返したい、永遠にこのページを見続けていたい、という思い。
その2つの思いを両立させるだけのものが、この作品にはある。
ネタバレになるので詳細は避けるが、主人公の2人はあるきっかけによって己の運命と対峙せざるを得ない状況へと追い込まれていく。
文章構成の妙によって、予め最終的な結果「だけ」がわかっている我々読者は、どうしてそうなるのか、本当は何があったのかということを、知らずにはいられない。だから続きが気になって仕方がない。
と同時に、登場人物一人一人の心の内が、その抱える苦悩が告白され、それは我々の心を深く深く抉り、人として生まれた者全てに問を投げかけ、足を立ち止まらせる。美しい文章とも相まって、何度も何度も咀嚼するように繰り返し読まずにはいられない。
衝撃の事実を突き付けられて、いったい何度鳥肌が立ったか。自身ですら意識していなかった心の最奥に言葉を突き立てられ、何度涙したことか。
この作品を生み出してくれた作者様と、この作品に出会えた縁に、精一杯の感謝を。
僕はきっと、この作品に出会いたかったんだ。
一人の人の生は、流れていく時の中では点でしかない。その点でしかない人の生が集まり、流れとなっていくときに歴史となる。それは、時にゆっくりと穏やかに。そして、時には全てを押し流す濁流のごとくに。
これは、とある王国の興亡という激流の歴史の中で生きる意味を模索しながら精いっぱいを生き抜いた人々の物語である。
作者が中世から近世ヨーロッパをモデルにしたという架空の王国が舞台ながら、まるで実在したかのようにその時の時代の雰囲気、また人々の生活が生き生きと描かれている。実際の世界が多くのものを包括し、それぞれがお互いに影響しあいながら進んでいるように、この物語も様々な出来事がからみあいながら進んでいく。それが物語の世界の幅と奥行き、そしてリアリティを与えているのだろう。
歴史の必然と時が満ちる、ということ。人の生きる意義。自分に残されている時間や運命がわかった時、人はどうやって生きていくのか、などなど。
この物語を読むときに、心に迫ってくるものは人それぞれだろう。
この物語の抱えるテーマは非常に重たく過酷なものなれど、一人ひとりの喜び、悲しみ、また葛藤と丁寧に描かれていく心理描写に、読み手はぐいぐいと物語の世界に引きこまれていく。
「それでも朝日は昇る」
この物語の題名でもあるこの言葉が作中にでてきた時、あなたの心に浮かぶ想いは。
希望か、それとも。
じっくりと、心揺さぶられるような物語を読みたい、と思っているあなたへ。
心をこめておすすめです。
本当に一言でいうと、色々なことを考えさせられる小説です。
それは差別だったり、偏見だったり、子供に対する虐待だったり、頂点に立つものの苦悩や孤独、本当の努力とはなにか、敗者とは、勝者とは一体何なのか・・・・ということをです。
この小説は確かに、「恋愛を基軸」として発展していきますが、それ以上に、彼らの周りで起こる事象、彼らの苦悩が、手にとるようにわかります。
私は、乱読家ではありませんが、ハマった小説は、何回でも読んでしまう気質の持ち主です。この小説は、実は別の小説にハマっていた時期にその小説を解説しているブログで紹介されていた小説でした。
皆さんも、この小説を読んで色々なことを考えてほしいと思います。