最近の作家は能力を持っているそうです。

穂志上ケイ

短編

 皆は本を読んだことはあるかい?

 漫画、小説、雑誌、どれにおいてもそれは作家がつくった物だ。それを読んで何か感じた事はあるかい?

「面白い」「感動する」「つまらない」

 どう感じるかは人それぞれだ。

 たが、そう感じるのは作家が意図的にやっているとしたら?

 何が言いたいかって?それは────



 ◼◼◼

 私は暁月ねむ。先日、賞をとり作家になったばかりだ。今日は私の作品『本当の自分』が発売する。その本は素直になれないヒロインが、幼い頃から一緒だった後輩に告白するまでの話だ。

 せっかくだから、本屋で買っていく人を見たかったのだが────「怖くて見に行けない!」

 だって、誰も買ってくれなかったらショックじゃん。

 だから


「帰って、小説でも書こうっと」



 ─1か月後─

 ネット上である事がつぶやかれた。


 今回賞をとった『本当の自分』?ってやつ。

 全然おもしろくねーな。何が言いたいのか全く分からん。クソ小説だな。それと担当はちゃんとを教えたのか?と。


 私がそれに気づいたのは投稿されて3日後だった。


「・・・・・・傷つくな―。そんな事言われると」


 それからすぐに担当の青沼さんから連絡があった。『大丈夫。気にしないで』と言われた。でもそれが出来るほど、私の心は強くない。でも、ここでくじけてもどうにもならない。私がこれからする事はただひとつ。ひたすら小説を書き続けること!そしていつか胸を張って私の作品はすごいんだ!って言えるように。

 それから私は、担当からの連絡が気づかないほどに小説を書いていた。



 それから2週間ほどたった日に電話がかかってきた。


「やっとかかった。あ、暁月先生。聞いてください!実は────」


「本当ですか!」


「はい!なので、編集部に来てください!」


「分かりました」


 私は急いで編集部へと向かった。


「暁月先生」


「青沼さん、あの─」


 彼女が私の担当の青沼さん。ショートボブで童顔の小さく可愛らしい人だ。常に真面目だが、ちょっとぬけてる所もあるが。

 そして、彼女の隣には─


「はい、こちらがあの覇山雄二はやまゆうじ先生です!」


 覇山雄二、彼の小説はどれも読者を感動させる傑作だらけだ。


「あの、暁月ねむです。よろしくお願いします」


「ああ、よろしく」


「それで、私に話って」


 覇山先生と青沼さんは険しい顔で見つめあっていた。


「えっとー、まずは暁月先生。この間ネット上でつぶやがれたこと覚えてるよね」


「・・・・・・はい。そりゃもう、鮮明に」


「そこでね、『』を教えてない。ってあったでしょ」


「はい。でも、何の事かさっぱりで」


 すると、覇山先生が大きくため息をついた。


「本当にやらかしてますね。青沼さん」


「す、すみません!」


「ど、どういう事ですか?」


「暁月先生、実はな作家にはそれぞれ能力がある。まずはこれを」


 先生が渡してきたのはスマホぐらいの大きさで、薄く透明なプレートだった。そこにはこう書いてある。


 職業:作家

 名前:覇山雄二(42)

 能力値:体力61

   アイディア87

   文章力70

   小説判断力65

   文章魅力53

 MP131

 攻撃属性:感動、ストーリー構成(大)

 守り属性:異世界、恋愛


「あの、なんですか?これ」


「先ほど、作家には能力あると言った。それが私の能力だ」


「能力ってゲームの世界じゃあるまいし、これ手作りですか?よく出来てますね」


「まぁ、最初は信じないだろう。だが、私はこの能力のおかげで、良い小説を世の中に出している。そこだけは覚えておいてくれ」


「じ、じゃあ、仮に能力があるとして、私にも能力があるんですか?」


「さぁーな。基本作家になる前に、1つでも能力があるか調べるんだが、それを青沼さんは忘れてしまった。そして、あんたの小説の賞をあげちまった。だから、無いとも言えないが───。一応調べるか」


 先生はポケットからもう1つのプレートを取り出した。


「これに触れてみろ。そしたらあんたの能力が分かる」


 私は言われた通りにプレートへ触れた。


 職業:作家

 名前:暁月ねむ(19)

 能力値:体力32

   アイディア47

   文章力41

   小説判断力20

   文章魅力39

 MP:0

 攻撃属性:書く(中)

 守り属性:なし


「これが、私の能力。─────しょっぼ!」


「良かったじゃないか。書く(中)があるぞ。当たりだ!」


「どこが当たりなんですか!能力値は低いし、能力は1つしかないし。こんなんじゃ、私いい作家になれない・・・」


「おいおい。何を落ち込んでる。それで終わりじゃないぞ!あんたの努力次第じゃ能力はどんどん上がっていく。それにあんた今日までずっと小説書いてたんだろ。そのおかげで書く(中)が身に付いたと言っても過言じゃない。だから、落ち込むのはまだ、早いぜ!」


 覇山先生。

 そうだよ。私は決めたんだ。いつか胸を張って私の作品はすごいんだって言えるまで、私は書き続ける。


「あの、ありがとうございました」


「何故礼を言う」


「えっ、だって覇山先生のおかげで、私は能力の事も分かりましたしそれに私が進むべき道を教えてもらいました」


「それは違う。進むべき道はあんたか、暁月先生が見つけたんだ。私はヒントを与えただけだ。


「先生・・・・・・。本当にありがとうございました!──あの、私、帰って小説書いてきます。失礼します」


 私は編集部をあとにした。



 それから私はひたすら書き続けた。毎日、毎日。そして、半年後には『追憶のカケラ』を出版した。最初の本よりは売れたけど、そんなのはどうでもいい。皆が『才能がない』

『誰がお前の本なんか読むか』『売れようと必死すぎ』などと言われてもいい。だって、必死になることはカッコ悪い事じゃないし、誰も読まなくても、私は読む。才能がなくても、書きたい世界がある、それだけで理由は十分。大勢の人に理解されなくたっていい。どんなに理解されなくても、私が一番の理解者だ!



 そして、約1年後私は3作品目を出版した。

 その本は様々なメディアに取り上げられた。

 皆は私にしてきた仕打ちをまるで無かったかのように振る舞い、私の小説を褒めてくる。でも、何も感じない。当たり前って言えば当たり前かな。だって、この作品は自分自身の為に書いたんだから。どれだけ褒めても、あなた達の心には刺さってないだろう。でも、ひとりでも刺さってくれる人がいるならば、その人は私の作品を愛してくれてるんだろうな。


 その一人の読者に

 ありがとう。


『最近の作家は能力を持っているそうです。』


 あとがき。




 ────────────────────────────────────────

 この度は『最近の作家は能力を持っているそうです。』を読んでいただきありがとうございます。この作品は有賀菜々様 @xBl4ZSo7OMvxlur様とのコラボです。

 どうぞ、有賀様も小説を書いていますので、そちらもよろしくお願いします。

 今回は短編として、書かせていただきましたが、好評であれば、連載して行きたいと考えています。

 では、また会える日まで。

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最近の作家は能力を持っているそうです。 穂志上ケイ @hoshigamikei

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