日傘がない!
ぼーっと
何も考えない時間は、大事だ。その間、脳内では記憶の整理整頓をしているらしい又特に理不尽な事態に陥った時を速めるのにもうってつけ。
窓から見える校舎裏の寺の屋根の相輪をぼっーと眺めていた。あの輪は幾つあるのだろう。
6限は自習なはず、寝られると思っていたのに。今日は、体育祭の競技の練習ではない、女子も何故かいるし、なんか格技室に整列されられてる。
なんか整列って完全に軍隊ですよね。運動会だって元は軍事訓練でしょ?本当、軍国主義国家の名残、残り過ぎなんですけど。
「きちんと並べ!」
頭の悪そうな暑苦しい脳筋の体育教師が叫ぶ。
きちんと並ぶ事に、何の意味がある?全体、独裁主義国家のマスゲームでもさせる気ですか?
そして抜き打ちの身体検査が、始まった。校則違反の生徒に指導が入る。髪が茶髪だの、スカートの丈が短いだの、うるせぇ。
髪型がツゥーブロック?うるせぇ。
俺みたいな、普通に制服を着こなしている。生徒からしたら本当に何の時間なんだよ。返してくれよ。
こんな狭い空間に学年全クラス押し込められ圧迫検査、暑苦しい。心のひさしが欲しいわ!
俺の昼寝時間。俺は、意味もなく相輪の数を数えていた――
社会的ルールとは、本来人々を理不尽な不利益から守るものであり、為政者側、運営側の都合で作るものではない。
バカのひとつ覚えのように、憲法改正を叫んでいる市民の生活など、知らない貴族のような二世、三世の政治家の言葉は、薄っぺらで血の通っていないゾンビの咆哮、嫌悪感しか感じない。
そんな上から目線で作られた理不尽なルールは、学校では、ブラック校則と呼ばれたりする。
我が学舎にもそんなくだらない悪習が複数あった。
「これから。校長室に行きます!」
「行ってらっしゃい」
「コウちゃんも行くの!」
手首を強く捕まれる。
「痛い!痛い!本当に癖になる!」
やだ!やだ!何!?痛い痛い!!
あなたは柴田勝頼なの?
俺、最終的にサッカーボールキックされるの!?
ボールならまだしも、人を蹴るのは良くない事だと思う。
「嫌ですよ。キライなんですよあの人…朝礼の社会の為に成長しろ的な話とか、個人が尊重されてこその社会でしょ?順番が違うんですよ!全体主義的思想嫌いです!」
「これから校長先生と交渉するの!」
「こう…交渉?生徒会の予算交渉とかですか?」
「それなら。キラキライケメンの副会長と行けばいいのでは?俺は部外者、モブ生徒、生徒会役員でもないし…」
「あら?役員に成りたいの?そうならそうと、言ってよ!庶務…いや私専属の秘書やる?」
(非公式な雑務を承っているので、兼務は結構です)
「いやいやいやいや!!言ってない!言ってない!興味ないっ!」
「酷いなぁ。興味は持ってよ。頑張っているのだから…」
「…」
「じゃ行くわよ!」
「切り替わり早っ!じゃの意味が分からない!」
「もう駄々っ子なんだから!これから署名を持って行くの!」
「ショメイ?」
「会長待って下さいよぉ…」
階段の下から弱々しい声がする。
眼鏡女子がヨタヨタと雑に綴じ紐で閉じられた大量の書類を持ちながら、上がって来た。あの生徒会室でアイナ先輩が、窓から投げた鍵を受け取った一年の書記の子だ。
うーん気になるなぁ。適当な蝶々結びしないでよね!
「コウちゃんは、署名しなかったの?」
「ショメイ??」
「ブラック校則を変える時が来たのよ!」
「時が来た!…ただそれだけだ…」
「コウちゃん何言ってるの?」
「俺はクラスでハブられてるので、そういう情報は来ないんですよ」
「生徒会のSNSに登録していないの?」
「SNS?ああ…大の大人が、日頃言えない悪口を辛辣に発言する場の事ですか? 」
「コウちゃん目のハイライト消えてる…」
「うちの学校カップルで下校禁止なの!」
「へ?」
「え…えへ?」
「何でこんな近距離で二回も聞き直すの!?」
「男女共学になった時に追加された校則なの!男子がまだ圧倒的に多いから変ないざこざを起こさせない為なんだって…」
「リア充爆発して分子いや量子レベルで分解しろ!」
お隣の絶世の美少女がなぜか病弱な俺に構ってくるっ!? 花和田 鬼小太 @takashi00
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