笑うな、笑え、笑って、笑ってやる、笑う

この笑いから目を背けてはいけない。

本作は『笑い』を主軸に「笑いとはなにか?」を問うことをテーマにした作品だと理解しました。

笑いとはなにか? と聞かれても漠然としていますよね。
例え話を出します。

【例1】
お笑い芸人が熱湯風呂の上で「押すなよー、絶対押すなよー!」と言っているのに、押されてしまって熱湯風呂に落ちる。
のたうち回り熱がる芸人。

これはおもしろいですか? 笑えますか?
私は笑います。
では、こちらはどうでしょう?

【例2】
幼児は熱湯が入ったやかんを持つお母さんに「やめて! やめてよお母さん!」と言っているのに、頭からかけられてしまう。
のたうち回り熱がる幼児。

これはおもしろいですか? 笑えますか?
私は笑えません。

やっていることは大差ないのに、人・心理・背景が違うとこんなにも変わってくる。
でもきっと、【例2】を笑える人もいるのでしょう。そう言う、ただ人が苦しむことを笑える人間もこの世の中にはいます。

ならば、『笑い』とはなにか?
その答えがこの作品には描かれています。

笑いを哲学することを中心に据えながらも、物語はしっかり青春ものです。
友達の心根を知って友情が深まったり、心が死んでる美少女に恋をしたり。
また主人公は男なのにビジュアルが美少女というコンプレックスを持っています。男らしくないことを嘆いています。
しかし、『笑い』に立ち向かい、友人や好きな人と触れ合うことで成長し、コンプレックスへの解を導き出します。
この解がとても「おもしれぇ」のです。

笑ったり、笑われたり、それによって良い気分になったり、悪い気分になったり。
笑いとは本来とても複雑なものなのに、我々はいつの間にか本質に蓋をして「とにかくおかしかったら笑っていい」と単純明快な結論を付けているように思います。
だが、そうではないのだ、と。
この作品は我々の当たり前を覆す一撃を備えている。そう確信いたしました。

この『笑い』から目を背けず考えてください。『笑い』の本質を見つめてください。
でも、まあ、最後は、

——笑ってください。