第2話 欠落
世間はGWに入った4月の最終土曜日。
今日俺たち1年生のメニューは、先輩の練習試合の準備。
入部してからまともにボールなんて触っていない。ひたすらラントレだ。
強豪校とはわかっていたが、まさかここまでとは。
絶対レギュラーになってやる!!
そう心の中で叫んで、家を飛び出した。
朝日が雲の間から顔を覗かせ、木漏れ日のような長い光が注がれていた。
先輩達より、30分早く集まった1年生は
まず体育館のマップ掛けからだ。
昨日の夜やったんだから、いいだろう。
そんな愚痴を呟き、そっと胸の奥にしまった。
その次にゴールを前に出し、ボールの空気入れ、ドリンク用意を済ませたら先輩達がやってきた。
「おはよー」「皆んな早いなッ」「今日応援頼むぞ」挨拶を交わし、更衣室のある校舎方へ消えていった。
ちぇっ、何だよせっかく準備してやってんのに礼はねぇーのかよ。
誰かが、小声で文句を言った。
「バカ。聞こえるだろ!」
「そんな訳ないだろ。」
マネージャーの佐藤夏菜子先輩が残っていることをコイツらは知らないんだろうなー
全く、馬鹿な奴らだ。罰トレ確定だ。
相手のチームが来て、いよいよ試合が始まった。先輩達の動きは機敏で一切の無駄がない。
次々とネットを揺らしている。
綺麗だ。見ていてそんな印象を受ける。
4試合が終わったところで、1年生に集合がかかった。
「ここから、2.3年は昼休憩に入る。その間、相手の監督さんが1年生の試合をしないかと言ってくれたから、お願いしといた。次の試合出たい奴いるか?」
迷わず全員の手が上がった。
願ってもないチャンスだ。
入学以来ただ1度もボールを触らせてくれなかった監督から、こんな提案があったのだから。
「じゃあ、端のお前、お前、お前…」
順番に指を指され、それぞれの顔が笑顔になっていく。
あえて監督の正面に立ったのが、仇となった。
ピーー試合が始まった。
ジャンプボールは身長で相手を圧倒しているウチが獲った。
1人が指示を出しながら、ドリブルで上がっていく。
パスを出し、もう一人が華麗にレイアップを決める。
そう思ったら、今度はパスカットから長いパス1本出し、スリーポイント。
一切、無駄のない動き。思わず見入ってしまう。
そのままこのピリオドはウチが圧倒した。
俺に声がかかったのは、3ピリオド目だった。
ここで、活躍してアピールするぞ。気持ちが高揚した。
何たって、中学での俺はザ・エースでボールはすべて俺に集めろ。といういう感じで、県大会に進めたのも俺が決めたおかげといってもいい。
笛の合図で試合が再開した。あっという間に仲間が点を決めた。
相手が攻めてくる。1対1だ。2メートル先の相手の左足がほんの僅か踏み込まれた。右だ!そう思った瞬間、相手の体が反転し、左を抜かれた。「あッ」そういった時には、もう遅かった。相手に特典が入る。
その後は、コッチのボールだ。
いきなり、パスが飛んで来た。ドリブルで上がっていく。
前に敵が2人いる。間と見せかけて、パス出そう。
しかし、相手の方が一枚上手だった。一人が突っ込んできて、俺が
パスを出そうとするともう一人が右側に回り、パスを出した瞬間カットされた。
しかも、俺は知らずしらずのうちにコートの左側へ追い詰められていたのだ。
コートの中盤でボールをとられ、味方は既に上がっているという状況。4点目を献上してしまった。
「やっぱレベル高ー」そう実感した。その後も、仲間の得点、俺のミスによる失点を繰り返し、今まで圧勝していた試合は、このピリオドだけ互角の点差で終わった。
あれ、俺めちゃくちゃ下手じゃね?
たぶん、事実だろう。そう、思った。
熱く、盛り上がれ!! @takanokiba
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。熱く、盛り上がれ!!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます