熱く、盛り上がれ!!
@takanokiba
第1話 孤独
眩しいライト。キュッキュッっと床とシューズがすれる音。熱気に包まれた空気。指示を出す声。ボールが床に弾む「バン」というビブラート。ネットが揺れてパサッとする微かな音。
この感じが本当に好きだ。
高校の仮入部。受験の間、遠のいていた体育館のコートが今、目の前にある。
東京の中でも名門中の名門。鷹山高校のバスケ部が目の前で練習をしている。
苦労して受験勉強をして良かったなぁ。このチームで全国制覇だ。そんな妄想ばかり膨らんだ。
俺がこの鷹山高校を選んだ理由は、横浜にある自宅から電車一本で通えることと,
インターハイ全20大会のうち3度優勝5度の準優勝、またプロバスケットプレイヤー輩出率3位の超強豪校でありながら、全寮制ではないという魅力だったからだ。
というのも、渡辺家は母子家庭で、妹と弟はまだ小学校低学年のため、高校で家を離れるという選択は出来なかったためである。
幸いなことに、父親の家が裕福だったおかげで、母親の収入だけで生活できるだけでなく、横浜市内の一軒家と、俺を含めた子供3人を大学まで通わせるだけのお金はあった。そんなわけで、僕はバイトはする必要がなくバスケに打ち込める環境にあるのだ。
高校に入ってまだ1週間。
バスケ部に入ることだけが決まっていたが、仲のいい友達ができたわけでもない。
中学までは地元の子が多く、小・中とみんな連動式で学年が上がっていったが、高校生になって初めて全員知らない状況になった。
初対面の人に話しかけるのはやっぱり少し勇気がいる。別に人見知りじゃないけど、今のところ友達と呼べるような存在はいない。
俺は普通科だから、バスケ部の奴もいない。それに、名字が渡辺だから1学期は必ず席が窓際の一番後ろだ。
そんなある日の昼休み一人で菓子パンを食べていると、スマホに通知が来た。
「じゃーん!今、オリエンテーション合宿で富士山の近くに来てるよぉ~」
中学まで一緒だった萩野徹だ。メッセージと共に一枚の写真が貼られている。サングラスをかけた男子5人が富士山をバックに肩を組んでいる。
あいつの学校は偏差値48だっけ?ノリが軽そうだ。
俺はスマホから目を離し、ぐるっと教室を見渡してみる。読書をする者。昼寝をする者。スマホをいじる者。話し声はほとんどしない。
こっちは偏差値70だっつーのと心の中でほざき、「楽しそうでいいねぇ~」とだけ返信してスマホをしまう。
5時間目が始まるまであと、15分ある。英語の授業の準備だけして、机につっぷした。
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