梅雨の月
藍葉詩依
梅雨の月
「好きだ」
「はい?」
放課後の部室に憧れの先輩と二人っきり。
ちょうど夕暮れ時で赤い光が窓から差し込んでいて、マンガのような景色って意外と日常に隠れてるよなぁと考えていた。だからなのかな、憧れの先輩に好きと言われたような気がしたのは。
「俺、好きなんだ」
「えっと……?」
幻聴の可能性も考えて今言われた言葉を何度も頭の中で繰り返すけど好き以外の言葉にはならなかった。
「北川は嫌い?」
じっと私の顔を見つめてくる先輩はかっこよくて、こんなふうに聞かれたら誰だって好きですよって応えるような気がする。私の場合少し顔を背けたくなるけど……。
「好き、です」
たったひとこと。それも今までに言ったことがある言葉。それなのにこんなにも言いにくくなるなんて思ってもいなかった。
「よかった」
「私も、嬉しいです。先輩と両思いなんて」
優しく微笑む姿に好きという言葉は幻聴じゃなかったのだと安心することが出来た。初恋は実らないと聞いたことがあるけど私の初恋は先輩で。初恋が叶ったことになる。今このタイミングで私より幸せな人はいないだろう。そう思っていた。
「両思い……?」
困惑が入り交じったような声を聞くまでは。
「先輩今好きって」
「アニメ映画好きって言って北川は?って聞いたんだけど……両思いって?」
つまり私は大事なところを聴き逃していて勝手に解釈をし恥ずかしさを覚え、さらには人生初の告白をした。こういうこと?
「あ、えと両思いっていうのは私もアニメ映画が好きなので先輩と同じ気持ちで嬉しいなぁーと思いまして!両思いってよく恋愛面で使われるみたいですけどお互いに思いが通じあってることとして使うみたいなんで!この感情が両思い?で嬉しいなぁって」
頭の中でこんなことを言えば逃れられるなんて考えてもいなかったのに次から次へと出てくる言葉たち。人は窮地に落とされても意外となんとかなるということをこんなタイミングで知ることになるなんて思ってもいなかった。
必死に言い訳をしながらちらっと先輩を見るとなんだか顔が赤いような……?
「先輩?顔赤くないですか?」
「え、いや、そんなことないよ。それより北川もアニメ映画好きでよかった。嫌いな人もいるからさ」
「むしろ私はアニメ映画の方が見ること多いと思います!」
これは本当。映画に限らず3次元より2次元が好きっていうだけかもしれないけど。
「そうなのか。じゃあ今度俺の好きな監督の新作があるんだけどもし良かったら一緒に行かないか?」
「え?いいんですか?行きたいです!」
なんとか難は逃れたみたい。むしろ映画の約束ができるなんてラッキーかも。なんて言うんだっけ、これ。棚からぼたもち?
何はともあれデートだと思っていいよね?
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焦った。北川が両思いなんて言葉を使うから。
アニメ映画が好きということを伝え、北川は?と聞いたがいつものようなすぐの返答はなく、そのあとの返答も絞り出すような声で好きと言われたから、告白されたような気分になって冷静を保つので精一杯だった。
その上両思いなんて言葉使われたら……期待してしまうだろ、ばか。
アニメ映画って言うところが聞こえてなくて、告白みたくなったんじゃないかって。その上で好きだと言ってくれたんじゃないかって。そんなこと絶対あるはずないのにな。
北川には彼氏がいる。北川と幼馴染だという彼氏は部活が終わる頃になるといつも迎えにくる。嬉しそうにかけよる北川をみるのは正直辛い……。
だから淡い期待を持つなんてそれだけで無駄なことなのに……わかっていたのに、映画に誘ってしまった。
北川はあまりにもあっさりOKしてくれたけど彼氏さんに了解を得なくてよかったんだろうか。それとも俺が男に見られてないのだろうか。
OKしてくれた北川は映画いつみるか決めましょう!といいながら手帳を開き、日程が決まると小さな手で先輩とお出かけと書いた。それだけで俺は嬉しかったんだけど手帳にハートが書かれていることに気づき、落ち込んだ。
惚れた方が負けという言葉があるけど本当にその通りだと思う。
今度の日曜日、俺は北川と初めてのデートをする。そして最後のデートになるだろう。
一度だけでもデートができることに感謝するべきなのかもしれないな。
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朝8時。いつもの日曜なら私がこの時間に起きることは無い。だけど今日は別だ。憧れの先輩とデートができる最初で最後かもしれない日。どうせなら可愛く見られたい。そう思い私はタンスやクローゼットから服やカバン、さらにはアクセサリーまで部屋一面に並べて次から次へと自分の体に合わせ続けていた。
「どうしよう……」
候補を花柄のワンピースとフリルがあしらわれて腰にリボンがついているワンピースの2つに絞ることは出来たけどここからが難しい。
一人悩んでいるとコンコンッと心地いいノックの音が聞こえた。
「ちょうどいいところに!お母さん!どっちのワンピースがいいと思う!?」
ノックをしたのはお母さんだと思いワンピースをつかみながら扉を開けると先にいたのはお母さんではなかった。
「朝から元気すぎるだろ……ていうか部屋すごいな」
「ゆ、雪哉?何?どうしたの?」
「お前が前行きたいって言っていた映画の前売り券貰ったから行こーぜ?」
手に持つ券をひらひらと揺らしながらそんなことを言い出す幼馴染。
「ごめん、今日は先輩と用事あるから今度にして?」
迷わずに即答する。幼馴染との映画はいつでも行けるけど先輩との映画はこれを逃すと無いかもしれないのだから賢い選択だろう。
「えー、俺部活休みなの今週しかないぜ?てゆうか先輩って誰だよ?」
「先約なの!湊川先輩!あ、そうだ雪哉!ワンピースどっちがいいと思う?」
「湊川?湊川ってお前と同じ映画研究部の?」
「そう!ていうかどっち!」
「なるほど、じゃあ俺も行く。ワンピースは白の方」
服を決めてくれたのはありがたいが今の流れのどこにじゃあ、となる所があったのか誰か教えてほしい。
「聞いてた?先輩がいるんだけど」
「仕方ないだろー、俺だって休みねーし、他のやつ誘うには急すぎるし、前売り券は使わないともったいない。だろ?」
「私を急に誘うのはいいの!?ていうかダメったらダメ!」
せっかくのデートをなぜ幼馴染に邪魔されないといけないのか。数分いい争ったが雪哉は諦め、誰か別の人を誘うということで落ち着いた。
これでデートに集中出来る!私は雪哉が決めてくれたリボンのワンピースに着替えカバンは映画館で邪魔にならないようポシェットをさげ、映画館がある街へと向かった。
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「映画面白かったな」
「ええ!とっても!」
「そうですか?俺はあまり納得いかないです」
俺の問いに答えたのは二人。北川と北川の彼氏。待ち合わせ場所になっていた時計塔にいくと彼氏もいたのには驚いた。声をかけるまで二人はなにか言い合っていて北川は不機嫌そうだったけど俺が話しかけると申し訳なさそうに謝ってきた。
北川は彼氏のことは気にせずに行きましょう!といっていたけど、どう考えても邪魔なのは俺のほうで。一人で見ると伝えたが彼氏さんが3人で見ればいいんじゃないですか?と言い出したため今に至る。
「先輩?聞こえてますか?このあとまだ時間ありますか?」
「あ、ごめんちょっとボーとしてたみたいだ。時間は大丈夫だよ」
「じゃ、じゃあこのあとご飯行きませんか?」
「俺はいいけど……」
「ありがとうございます!じゃあちょっとお手洗い行ってくるので待っててください!」
バタバタと走っていく北川を見送り、姿が見えなくなると様子をうかがっていたのか声がかかった。
「湊川先輩に前言いましたよね?由美は俺のだって」
「いわれたね」
言われたことを忘れた訳では無い。それでも1度デートをしたかった。俺の横で嬉しそうに笑う北川をみたかった。だが二人で遊びに行こうなんてやはり彼氏さんの気分を悪くさせてしまったんだろうか。
「ごめん」
「わかってんならもうこれ以上あいつに付きまとわないでくださいよ」
「わかった……」
これはきっと帰れってことだよな。映画を三人でと言ってくれたのは優しさからだろうか。
「ごめんなさい、お待たせしました!」
「北川ごめん、俺課題あるの忘れてた。今日は帰るな」
「えぇ……そうなんですか」
「うん、だからあとは2人で楽しんでくれ。また明日な」
「また明日……」
北川はとても残念そうに見送ってくれて、彼氏さんはそんな北川の手を取ろうとしていた。俺はそんな二人の姿を見たくなくて背を向け、二人から離れた。
その後まっすぐ帰ろうと思ったが雨が降っていて、傘を持ってくるのを忘れた俺はお気に入りの場所へと向かった。
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「あーあ、先輩ともっとデートしたかったなぁ」
「俺とじゃ楽しくないって言われてる気がするんだけど?ていうかなんで手帳にハート書いてんだよ」
私は先輩に振られた後雪哉とハンバーガーショップでお昼をとりながら今日の日付にハートを書いていた。
「楽しいのは楽しいけどー。このハートは先輩と話せた日!」
「わぁ……女子ってそういうの好きな」
雪哉に引かれたような気がするけど雪哉にどう思われようとどうでもいい。
「別にいいでしょ!ねぇ、それより雪哉最近ちーちゃんに会ってる?」
「今日はバイト。ヘルプで入ったんだって」
「へー……。てあれ?もしかしてさっきの映画ちーちゃんと行く予定だった?」
「そう」
もしかしなくても雪哉の気分をさげてしまったみたいだ。ちーちゃんは私と雪哉の幼馴染みで、雪哉の彼女でもある。5歳上のちーちゃんは大学一年生で今年からバイトを始めたらしい。
「私と一緒にいてちーちゃん嫉妬したりしない?」
「しない、由美に悪い奴がつかないよう見張れっていったのは千夏だ」
「先輩は悪い人じゃない!」
雪哉はちーちゃんから見張れと言われてから部活が終わったあと迎えに来るようになり私と男子が二人になることがないように徹していた。
おかげでクラスメイトには付き合っているのかと何度も聞かれ、今でも勘違いしてる人がいるようだ……。
「先輩に変なこと言わないでよー?」
「変なことなんて言ってない。由美は俺のだっていっただけだ」
真顔でそんな返答をされたけど今なんて言った?
「雪哉、ワンモアプリーズ?」
「なんで英語?」
「いいから早く答えて!」
とんでもないような言葉が聞こえたような気がして雪哉の体を揺さぶった。
「ゆ、由美は、俺のだって、いった」
由実は俺のだ。それはよく漫画である、この人俺の彼女だからと同じ言葉じゃない?
「なんでそんな嘘いうの!?」
「う、嘘じゃない!嘘じゃないから!揺さぶるのやめてくれよ!」
「何が嘘じゃないっていうの!」
「由実は俺の彼女だ。なんて言ってないだろ!由実は俺の幼馴染だから、傷つけるなら近づくなって言いたかっただけで……!」
「伝わるか!!言葉が足りなさすぎるでしょう!」
雪哉の言葉が足りないのは以前からだがこれは流石に端折りすぎなのではないかと思う。
「それいつ言ったの!?」
「は、初めてあった時とさっきの映画終わったあと」
私の勢いに押されたのか雪哉の声がどんどん小さくなっていくが今はそんなの気にしてられない。
もし、もし雪哉の言葉を聞き私と雪哉が付き合っていると先輩が勘違いしたのであれば、優しい先輩はきっと気を使って二人にしようとするだろう。
課題がある、なんて嘘かもしれない。今思えば先輩は課題をギリギリにするような人でもない。
先輩にとっては後輩の恋愛面なんて興味が無いことかもしれないけど先輩だけには雪哉と付き合ってると思われるのは嫌だ!早く誤解を解かなければ……!そう思い私は急いでハンバーガーをお腹に入れ、先輩に連絡をした。
『今から会えませんか?話したいことがあります』
送った後にもう帰宅してたとすると迷惑なのではないかと思ったけど、もう取り消しはできないから諦めよう。
5分ほどで通知の音がなり、急いでメッセージをひらいた。
『どうした?俺は全然いいよ、どこ行けばいい?』
『私が行きます!どこにいますか?』
「幸也!私先輩に会ってくる!今度先輩にあった時あんた謝りなさいよ!あと、ちーちゃんにも伝えるからね!」
雪哉に言い伝え、トレイなどを片付けた私は先輩からの返信を確かめ書かれている場所にと急いだ。
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かなり強く降っていた雨は少し勢いを弱めポツポツと降るようになっていた。
街の中で人が少ないところや落ち着けるところを探すのはなかなか難しいけど俺はとっておきの場所を数年前に見つけていた。
空のガーデンーー駅ビルの屋上にあって、季節の花が植えられている場所ーー
台風が来る時や強風の時は閉まっているけど今日は開いていた。
ここは屋上にあることを知っている人でもなかなか来ない。それもそのはず。エスカレーターで屋上まで上がることは出来ず、10階まであがったあと階段で登らないといけないからだ。
知らない人がたまたまくる、なんてこともなかった。11階に上がる階段はエスカレーターや、お店と少し外れた場所にあり階段自体がなかなか見つけづらい。
きっと今からここにくるという北川もこの場所のことは知らなかっただろう。
俺は雨に当たるのは嫌だったため、空のガーデン入口から繋がっているガラス張りのテラスに座っていた。
『 今から会えませんか?話したいことがあります』
アプリを開きつい先程きたメッセージをもう一度確認した。
話したいこと、とはなんだろう。というか彼氏さんも来るのだろうか。
「せ、先輩!」
声が聞こえ顔を向けるとそこに居たのは北川だけだった。
「あ、あの!」
「走ってきたのか!?息きれてるぞ?」
「は、走りました。早く会いたかったので」
北川は天然小悪魔なのだろうか。その言葉で俺がどれほど嬉しいのか聞かせてやりたいよ。
「そうか、とりあえず座んなよ」
「ありがとうございます」
北川を座らせ、少し息が落ち着いたのを確かめたあと俺は気になったことを聞いてみた。
「北川彼氏は……」
「彼氏なんていません!」
彼氏という言葉に食いつくかのように北川の声が響いた。
「え、でも……」
「雪哉は私の幼馴染で!あいつには他に彼女がいますから!」
何を言われてるのかまったくわからない。仮に、本当に付き合っていないとしたら部活が終わったあと迎えに来るとか、手を繋ごうとするとか、北川は俺のだって牽制する理由がどこにもない。でも北川の目は嘘を言ってるようには見えなくて……。何が本当なんだ?
「ごめん、ちょっと整理がつかないんだけど……さっきだって手つなごうとしてただろ?」
「え?手なんか繋いでませんよ?」
見間違いか……?
「じゃあ部活後の送り迎えは?」
「雪哉の彼女、私とも幼馴染なんですけどすごく心配性で見張るように言われてたからです」
なんだよ、それ。じゃあ北川に彼氏はいないってことか……?
「先輩?」
何も返事をしなかったからか、北川は困ったように声をかけてきて、なにか迷ってるような表情をしていた。そういえば北川は話したいことがあってここに来たんだったな。
「ごめん、話したいことがあるんだよな?」
「え」
「なに?」
「えっと……」
話すことがあって俺に会いに来たはずなのに北川は言いにくいことなのか、黙り込み下を向いてしまった。
「北川?」
大丈夫かと声をかけようとしたが北川はすぐに顔をあげた。あげられた顔は俺の目と合い、意を決したかのように口を開いた。
「……き、です」
「ごめん、もう一回言って?」
頑張って言おうとしてくれたのは理解してるんだけどあまりにも言葉が小さくて、聞き逃してしまった。
「好き、なんです……」
「え?」
今度は聞き逃さなかったけど、聞き間違えたか……?
「先輩のことが大好きなんです!先輩に出会って一目惚れをして、先輩と過ごすたびもっともっと好きになっていって!こんな私じゃ不釣り合いなのよくわかってるんですけど、それでも好きなんです!」
ワンピースを握りしめながら俺に向けられた言葉はどれも現実味がなくて、それでも言葉を紡ぐたびに北川は顔を赤くしていくから、この想いは本当なのだと思えた。
「先輩がこれから受験で忙しいっていうのはわかってます!だからデートしてほしいとか、そんなわがまま言わないから!私を!彼女にしてください!」
息継ぐ暇がないほど言葉を続けた彼女は耳まで赤くなりながらも答えを待つかのように俺の目を見た。
バカだな、俺の答えなんて決まってるのに。
「俺も、好きだよ。俺の彼女になってください」
雨が降っていたはずの空は雲の隙間から光が差し、恥ずかしそうに、それでも嬉しそうに笑う北川を明るく照らした。
❀.*・゚❀.*・゚❀.*・゚❀.*・゚❀.*・゚❀.*・゚❀.*・゚
「ごめん、話したいことがあるんだよな?」
そう言われた時、困った。だって私はもう言いたいこと全部言ってしまったんだもん。雪哉は彼氏じゃないということが出来た私に他に言いたいことなんて……あるとしたら先輩のことが好き、という気持ちだけ。でもそれってこのタイミングでいうべき?
言葉を詰まらせていたからか先輩にもう一度声をかけられてしまった。
ここで言わなかったら今後も言えなくなっちゃうかな……?言え!言うんだ私!
床を見てた私は先輩の顔を見つけ好きですと伝えた。前体験した緊張感に見舞われながら精一杯声を出したのに、言われた言葉はもう一回言って。だった。
こんなにも勇気出してるのに……でも聞こえなかったなら仕方が無いよね。そう自分を納得させてもう一度好きと伝えたのに今度は戸惑ったかのような声で。そんなに私わかりにくかったかなぁ。
もう、先輩には直球で行かないとダメかな?どちらにせよここを逃したらダメだよね!私は今までの感情をすべて言葉にしようと決め、服を握りしめた。
「先輩のことが大好きなんです!」
ずっと、ずっと言いたかった言葉。言っても叶うことはないと勝手に諦めてた言葉。
「先輩に出会って一目惚れをして」
はじめはこの感情がなにかなんてもちろんわからなかった。
「先輩と過ごすたびもっともっと好きになっていって!」
他愛ない言葉も、優しい笑顔も、過ごした時間は誰かと比べたら少ないけど、それでも想いは誰にも負けない。
「こんな私じゃ不釣り合いなのよくわかってるんですけど、それでも好きなんです!」
今が不釣り合いだというのなら釣り合えるように頑張るから。
「先輩がこれから受験で忙しいっていうのはわかってます!だからデートしてほしいとか、そんなわがまま言わないから!」
本当は二人でいろんなところに行きたい。でも、我慢してほしいと先輩が望むならいくらでも我慢できる。
だから、だからどうか私を選んでください。
「私を!先輩の彼女にしてください!」
今日告白するなんて思ってもいなかった。気まずくなってから過ごす部室が嫌で、卒業式の日になんて考えていたこともあった。
だけど今言えて良かったと思う。たとえ気まずくなったとしても先延ばしにしてちゃんと言えていた保証はないから。勢いに任せての告白だったけど伝わったかな……。
「俺も好きだよ」
嘘……?ではない、だって先輩は今までないくらいに笑ってるもん。
「俺の彼女になってください」
先輩の彼女。そうなれればと何度も願った。今日のデートだって先輩といる時間が本当に幸せでこんな日がもっと続けばと思った。私はこの先も隣にいていい……?いつからだろう。とか好きってどのくらいだろうとか聞きたいことは沢山あるけど今はこの幸せに浸ってもいいよね。
もしかしたら遠回りをしていたかもしれない分、これからは二人の時間をたくさん重ねていきたい。
大好きです、先輩。
梅雨の月 藍葉詩依 @aihashii
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