最終日 カミサマに出会いました。
鎌倉駅を出て、駅隣のトンネルをくぐり、江ノ電の線路沿いに進んでいく。
民家、民家、路地、乾物屋、民家、路地。いくつもの路地が建物の間に続いている。
道路を左手に、私は袋小路の路地に入った。
もう何度も通って、すっかり道を覚えてしまっている。
その石段を少し上ると踊り場があり、さらに奥には上へと上っていく石段がある。
その石段を登りきると、緑の屋根の
あったはずなんだ。
「なんで……?」
そこにはなにもなかった。
緑の屋根の拝殿も、
腐った木片が、
「なんで……?」
メモはちゃんと残ってた。
字が汚くて
全部残ってるのに。
なんでなにもないの?
風が吹いて、ざわざわと
あんなに涼しくて気持ちのいい音だったのに。
今はなんだか……。
私は、ご神木があった辺りへと歩いていった。
「……あった」
白いナデシコの花だ。
やっぱり、ここだ。
私はここにいた。
いたはずなのに……。
私は"なに"を見てたの?
ざわり、と背中が
しばらくの間、そこから動けなかった。
ふいに草間で音がする。ざくり、と心臓に一突き。
急いで顔を上げた。
その音のした方へ、目を向ける。
全容は見えなかった。
でも、変わった毛色の"獣"だった。
その獣が、山へと走り去っていく姿が見えた。
どこかで、獣が高く鳴く声が聞こえてくる。
鳴き声に交じって、笑う声が。
いやー、愉快、愉快!
そうしてしばらくすると、何かが腹からせり上がってくる。
しまいには耐えきれなくなって、ふっ、と息を吐き出した。
そのまま空に向かって、声を上げて笑う。
――なんと見事に、化かされたものだ。
―完―
カミサマのいうとおり ぽち @po-chi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます