③三章ボツ版 パーティーを追い出された元勇者志望のDランク冒険者、声を無くしたSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される


 以降の進行はエピローグまでさほど変わりはありません。

反省したロイドさんは一生懸命走って、リンカを助けて、そして三回目のぶっ倒れタイム(笑)

 で、散々なことをした結果……


【以下、本文】



●51話:Cランク昇段試験


「ッ……!」


 左足に痛みを感じて、ロイドは思わず顔をしかめる。

しかし痛みを感じると言うことは、足がまたちゃんとロイドの身体にくっついている証拠。

 治癒士によれば、あと少しばかり傷が深ければ、切断は不可避だったらしい。

ならば痛みに対してでも感謝の念が湧くというもの。


 ロイドはすこし足を引きずりつつ道を行く。

そして一週間ほど前からリンカが世話になっている小さな診療所の扉を叩いた。

すぐさま扉が開き初老の治癒士はロイドを穏やかな表情で招き入れた。


「リンカの様子はどうですか?」

「毒はほぼ抜けました。明日か明後日にでも、家へ帰れますよ」


 治癒士の言葉にロイドはほっと胸をなで下ろす。


 実際の所、数日前までのリンカは常に命の危険と隣り合わせの状態だった。

それでも彼女がここまで持ち直すことができたのは、治癒士曰く、初期対応が良かったから、ということらしい。

 ロイドのつたない”回復魔法(ヒール)”だったが、そのおかげでリンカは一命を取り留めることができた。

あの時、なりふり構わず、魔法を発動して良かったと、改めて思い直す。


 そんなことを考えていると、この一週間ですっかり通いなれた病室の扉の前に立っていた。


「入るぞ」


 ノックをしたうえで入ると、真っ先に飛び込んできたのは、温かい風の中で靡く、美しい黄金の髪だった。

 ベッドから身を起こしたリンカは暖かい陽だまりの中で、窓から吹き込んでくる穏やかな風を浴びている。

ロイドに気付かない程、心地が良いらしい。

その横顔は凄く穏やかで、凄く愛らしくて、そして凄く綺麗で。

自然と胸が熱くなり、思わず見とれてしまう。

 しかし今日は伝えなければならないことがあることを思い出す。


「おはよう、リンカ」

「!」


 ようやくロイドに気づいたリンカは、あたふたと窓を閉めた。

凄く申し訳なさそうに顔をしかめ、ペコリと頭を下げて見せる。


「邪魔したか?」


 リンカは頬を僅かに赤く染めつつ、フルフルと首を横へ振る。


「身体は大丈夫か? 気分は良いか?」


 矢継ぎ早だが、柔らかく伺う。

今度は首を縦に振った。顔色も昨日と比べてすこぶる良く、治癒士の語った検分に間違いはなさそうだった。


「リンカ、聞いて欲しいことがあるんだ」


 そう切り出す。リンカは青い瞳にロイドを写す。


「先ほどCランク昇段試験を終えて来た。その結果なんだが――」


 ごくりと、リンカは息を飲み、まるで自分のことのような雰囲気で緊張した様子を見せている。


「ダメだった。今回も落第だ」


 石化魔法でもかけられたのか。リンカはぴたりと表情を固まらせたまま、微動だにしない。

宝石のように透き通っている瞳に涙がにじみ始める。


「おいおいリンカが落ち込むことじゃないだろ?」


 ロイドは穏やかな笑顔浮かべ、涙をこぼすリンカの頭を撫で始めた。

そうされる彼女は、状況が上手く呑み込めていないのか。

涙を零しつつも、視線を右往左往させ、更に顔を真っ赤に染めている。

全く持って忙しそうな状況だった。

 そんなリンカの様子に、ロイドは微笑ましさを覚えるのだった。


 ロイドはおもむろに立ち上がった。

そしてサイドテーブルの上で、花瓶に生けられた花束へ手を翳した。

 気持ちを落ち着け、自分の魔力を、回復魔法(ヒール)へ変換して放つ。

相変わらず手から花へ降り注ぐ輝きは弱いし、色は曇りを帯びている。


 それでも少し元気を無くしていた花が葉が瑞々しさを取り戻した。

項垂れていた花弁はしゃんと立ち上がる。

まるで眠りから覚めたかのように、花は再び凛と咲き誇るのだった。


「こいつは水もあるし、ちょっと元気をなくしていただけだ。みんなやリンカのお陰でこれぐらいはできるようになったよ」


 しかし試験で出された課題の花ははもっと萎れていて、水もなかった。

何の補助もない状態ではロイドの回復魔法で、花を復活させることは困難だった。



 Cランク昇段への道のりはまだまだ遠い。

きっとこれまでの自分だったら、努力をしても、この程度の成果しか収められない自分に落胆しやさぐれていただろう。


 だけど今は違う。


 小さな成功だけど、それを素直に喜ぶことができる自分がいる。


 そう思えるようになったのは、この成功が色んな人が関わってくれた上に成り立っているからだった。


 図書館でモーラが声を掛けてくれたから、ゼフィがオーキスの気持ちを代弁してくれたから、オーキスが色々と教えてくれたから――なによりもリンカが傍で支えてくれたから。だからこそこの成果が得られたのだと思う。


 この恩に報いるためにも、いつかきっと、Cランクに。

 もしまたリンカが危ない目にあった時は、もっとちゃんと助けてあげられるように。


 そんなロイドの気持ちを知ってかリンカはロイドの指に、自分を指を絡ませる。


 ロイドは絡め返し、答える。


「ありがとう。これからも宜しく」


 リンカは満面の笑みで応えるのだった。



●●●



「行くよ」

「はいにゃ~」


 ロイドとリンカの様子を、扉の隙間にから見てしまったたオーキスは、病室の前に手土産を置いて、踵を返した。


「おっちゃんとリンカちゃん良い雰囲気だったにゃね?」

「そだね」


 帰り道の中、ゼフィが微笑まし気にそう呟き、オーキスは気の無い返事を返す。


「もしかして嫉妬にゃ?」

「は? んなわけないじゃん」


 外の日差しは温かい。何故かオーキスの気持ちも軽やかだった。

本人もどうしてそんな気持ちになっているのか分かっていない。

しかし悪い気分ではなかった。


「年上の男の人か……」

「? なんかいったにゃ?」

「ううん。よーし、稼ぎに行きますか、姉妹!」

「ちょ、ちょっと、オーちゃん!? 待つにゃ~!」


 オーキスは走りだし、ゼフィが跡を追う。


 不思議な胸の温かさを感じるオーキスなのだった。


【本文、以上】


……これ、すっきりとした終わりじゃないですよね……。さんざん引っ掻き回した挙句に、試験には落ちる。小さな成功云々とはなってますけど、無茶苦茶モヤモヤしました。

 オーキスもこんなロイドを見て、なんでちょっと意識しているような発言するんでしょうね……。

 当初は「諦めない姿勢」を描こうとしていました。が、読んでて気持ちが良いかどうか、冷静になって考えてみたとき、「だめじゃん!」と思ったのです。

 故に、3章は大幅な修正を行い、結末も変えました。


 ただ――ああだ、こうだ、と言ってもこれを書いたのは紛れもない、あたし自身でございます。とても良い経験&反省となりました。これからは気を付けます。


 最後に、そして繰り返しにはなりますが、こうした展開も世の中の作品にはあると思います。この展開を有り、と思う方もいらっしゃるでしょう。そうした方々の嗜好を決して否定しているわけではない、ということだけはご理解いただきたく思います。


 まぁ、これは「へぇ~、そんな過程があったんだ。ふぅーん」位の気持ちで、受け止めて頂けると幸いです。よろしくお願いいたします。


 それでは引き続き、本編をよろしくお願いいたします。

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3章没版【パーティーを追い出された元勇者志望のDランク冒険者、声を無くしたSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される シトラス=ライス @STR

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