「死を肯定する」という、ある種病的な主人公の設定に惹かれました。
その理由も、何故そうなってしまったのかの説明も読んでいて納得させられるだけの筆力があり異常な思考でありながら、読んでいて実に自然に受け止められます。
死ぬ事を魅入られながらも、その死に抗うというストーリーなのですが、その構図が実に面白いです。
貼られた伏線もラストまでできちんと回収されており話の筋で不条理を感じる事も特にありませんでした。
そして何より描写が綺麗です。
街並みやちょっとしたアクセサリーやキャラクターの仕草や服装等、風景や情景が実に丁寧に書かれています。
死に魅入られた主人公の旅路を描いた本作。
その結末まで実に楽しく読むことが出来ました。
面白かったです。
でも、読み終えることが出来てとても幸せだと感じています。
言葉一つ一つが色衝いていて、短い中に鏤められたいくつもの詩篇が繋がっていくような、心地よいひと時でした。
病のために死に惹かれていく、生を厭っていくグリュテの緩やかな推移と、
その進行に絡めて紡がれていくセルフィオとの淡い旅程は落陽から夜明けに至る白む空とその下で照り返す海原を眺めているようで、風に揺れて波立つ水面のように心が躍り、弾み、そして浮き沈みを繰り返しました。
散ることを知っても咲かない花の無いように。
そうですね、終わりが来るとわかっていても、読み進めずにはいられませんでした。
こんなに美しい物語があると、今では知ることが出来て幸せです。
ありがとうございました。
人の最期の瞬間がこの世界では光が空へ登っていく光景で描かれる……、
って言えば少し幻想的で読んでる私としても綺麗って思うかもって感じていたのですが、現実世界の人の最期、例えば火葬の出棺の時をイメージしてほしいのです。
もし、その誰かと誰かの最期の別れのシーンを恍惚とした表情で見惚れているような人が居たら『なんでそんな表情をしているんですか?』ってなると思うんですが、
その表情や感受性が『病の症状』だったらどう思いますか?
死への魅力を感じ、どんどんと己の身体を傷つけ蝕んでいく。そんな病がタイトルに書かれている『告死病』という病です。
そんな病にかかった少女のが物語の主人公で、死にぞこないの騎士と言われた魅力的な男性と出会い、病気が進行する前に頼まれた仕事をこなしていくというのが物語の導入で、
騎士様が主人公君を守る、死なせないといったニュアンスが籠っていそうなの誓いを立てたシーンが私の中で印象に残りました。
というのも、騎士様は組んだ人が命を落とすと、あまり良くない噂を持っている人物で、作中の魔物に襲われるシーンや、嫌がらせを受けるシーンでは主人公ちゃんのことを大切に想っているのが分かるので、とても引き付けられる言い表しにくいぐっとくる要素を秘めているんです……!
大切に想ってもらいながら守られる主人公ちゃん、ですが死に魅了される病はどんどんと進行し、やがては自分の身体を自分で──
もう、最終話を読んだのは1週間以上前なのですが、この素敵な作品を読み終わった後の満足感、どうやって言葉にすればいいんだろうと思っていたのですが、いくら時間をかけても思いつきません。
物語の結末は衝撃的でしたが、私の解釈では素敵なハッピーエンドでとても満たされた気持ちになりました。
素敵な作品なので、ぜひぜひご一読ください♪私の評価は文句なしの☆3です!むしろ☆が居れたりないくらい……!
作者様もとても素敵な作品をありがとうございました!