第183話 皇帝との再会の件です
「スズハル提督!」
「陛下、ご無事で」
最敬礼する涼井に対してリリザはようやくほっとした表情を見せた。
彼女はヴァッレ・ダオスタの私兵集団が帝国首都惑星アンダルシアの宮殿を攻撃し始めて以来、極度のストレスと緊張にさらされていた。
アンダルシアの中庭から離陸したタグボートは無事に惑星軌道へ、そしてそのまま惑星軌道も脱出した。
その際に涼井の艦隊からの重力子通信を受信したのだった。
涼井は戦艦ヘルメス、およびリオハ同盟の艦隊を引き連れてきていた。
そしてリリザは無事、味方の艦隊に無事収容されたのだった。
困っている時にやってくる重武装の味方ほどありがたいものはない。
「ではさっそくですがヴァッレ・ダオスタをさっそくとらえましょう」
涼井はにっこりと笑った。
ヴァッレ・ダオスタは私兵を使って帝国のスキをついた形ではあったが、逆にいうと踏み込みすぎた。虎穴に入り込みすぎたというわけだ。
そして宮殿にいるリリザを捕らえようとするあまり、通信社やインフラへの攻撃を怠り、さっそく通信社などがヴァッレ・ダオスタの暴挙を盛んに報道している。
もちろん艦隊到着後、涼井は帝国の通信社などのメディアに根回しを行い、相当に反帝政的なメディアでもリリザに同情的、好意的に報道するように資金も投入していた。
「スズハル提督、感謝しますわ」
リリザも微笑んだ。
「まずは陛下もお休みください。その間に進めておきます」
「そうさせてもらうわ」
涼井は高級士官向けの部屋をリリザとその一行に提供し陸戦隊に警衛させた。
それ以降の涼井の行動は迅速だった。
ヴァッレ・ダオスタは私兵を潜入させて攻撃をさせていたため、宇宙空間に対しての手当を何もしていなかった。つまり最初から制宙権は涼井の手の中にあった。
「提督、なんだか楽しそうですね」
と副官のリリヤ・スプルアンス大尉。
「そうだな」
涼井はメガネを指でくぃっと位置を直した。
「今回の件で大義も手に入る」
「といいますと?」
「リオハ同盟はそれぞれの国の承認があるとはいえ、国としてはできたばかりだ。帝国の皇帝を人道的な見地から救助して復位させたとなるとこれは立派な大義を得たことになる」
「はぁーなるほど……」
「国といっても形だけではなくてそういった正当性も積み重ねていかないとな」
(会社と同じだ)
その言葉を飲み込んで涼井は提督席に座り直してメインスクリーンをながめた。
メインスクリーンには刻々と戦況が表示されていた。
戦況といっても艦隊にできることはこの帝都の制宙権を確保することだけだ。
涼井の艦隊は広く展開した。
さらにグリッテルから借り受けた巨艦も何隻か配置した。
機動性では劣るが火力に優れた巨艦は使いやすかった。
その上で揚陸艦から陸戦隊の師団を降下させたのだった。
涼井の陸戦隊は首都周辺に迫っていたリリザの近衛師団と合流して突入した。
ヴァッレ・ダオスタの私兵は潜入と浸透は訓練を行っていたが正規軍との正規戦となると装備が不足していた。
戦闘はリリザが眠っている間に進捗し、涼井が5度目のコーヒー(に似た飲み物)を口にした頃に「ヴァッレ・ダオスタ本人を捕虜にした」との報告を手に入れたのだった。
【重要】課長が目覚めたら異世界SF艦隊の提督になってた件です Edu @Edoo
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