涼井晴康は、現代日本で商社に勤める35歳の営業課長。そんな彼が、目を覚ますと宇宙艦隊を率いる司令官スズハラ提督になっていた。突然、共和国と帝国の戦争に放り込まれた彼が、現代で培ったビジネススキルと営業テクニックで勝利を掴んでいく姿が面白く、社会人として学びを得られます。
主人公のスズハラが属する共和国軍は、部下は職務に忠実だが自分の判断で動けない指示待ち人間だらけだったり、上層部はやる気と根性だけで実現性の低い作戦を決定してしまったりと、日本の企業でもありがちな問題を抱えて帝国軍との戦争で劣勢に陥っています。
業務を改善するべく、まずは曖昧な憶測を抜きに数字ベースで分析する。周囲の理解を得るために前もって上役に話を通す。作戦行動は優先順位を決め、しっかりとプレゼンを行う。作業効率化のために軍を再編成するなど、共和国軍のさまざまな問題を現代のビジネス術に落とし込んでいく手腕が考えさせます。
どんなに自分が努力して成果を出しても、一人だけ功績を上げれば周囲の嫉妬を買って疎まれる。ときには味方に手柄を譲ったり、相手の面子を立てたり、そうした処世術が如何にも日本人らしく、どんなに出世しても謙虚で低姿勢なサラリーマン仕草が変わらないのが可笑しい。
一人のサラリーマンが銀河を二分する宇宙戦争の鍵を握る。この春、新社会人になる方にもオススメしたい作品です。
(「未知の惑星へ」4選/文=愛咲優詩)