ここまで「良いことばかり」の大ピンチは見たことが無い!

これは第35話「メール」を読了した時点でのお勧めになります。
ですが、ここまで読んだだけでも、自信をもってお勧めできます!
それだけ凄い「大ピンチ」を中盤クライマックスで見せつけられてしまいました。
ただの大ピンチなら、よくあります。
でも、ここまで「良いことばかり」の大ピンチは見たことがありません!!

本作は、ある編集者とアマチュア作家の挫折とリベンジの物語です。
どこかで聞いたような名前の小説投稿サイトのコンテストで大賞を取った小説『リベンジ』。しかし、その作風がレーベルに合わず、編集長の判断で書籍化が中止されます。『リベンジ』を推した編集者である主人公は、書籍化中止の同時にサイトから消えて行方をくらませてしまった作家に申し訳ないと思い、大手出版社をやめて国に帰ります。

そして、国元で祖父母が営んでいた小さな書店の店主として再出発しますが、そこで多くの人々に出会い、書店として専門書の出版まで手がけるようになります。
そこで、偶然にも作家と再会し、今度は自分の書店で『リベンジ』の出版を手がけようとします。この作家との再会も衝撃的なので、注目です!

そして、いざ出版秒読みとなったところで、突然「大ピンチ」が襲ってくるのです。これが本当に作家にとっても、主人公にとっても「良いことばかり」の内容なんです。でも、主人公たちとしては、正に「大ピンチ」です。この内容はぜひ作中で読んでください。私は思いっ切り痺れました!

この「大ピンチ」がどうなっていくのか、続きが楽しみでなりません。今から読み始めてもリアルタイムで楽しめるはずです。ぜひぜひ、読み始めてください!

さて、ここから、さらに物語を楽しむためのバックグラウンドについて少し補足しましょう。
本作の作者様は、実は前回のカクヨムコンにおいて『市長の恋』という作品で特別賞を受賞しています。本作にも『市長の恋』の主人公や主要キャラが重要な役割で出演しています。
ところが『市長の恋』は書籍化できませんでした。その事情については作者様が一切書いていません。しかし、本作の内容から、ある程度は推測できます。
むろん、本作はフィクションですが、作者様の体験が多く反映されているはずです。

作者様は本作で今回のカクヨムコンに参加する経緯をエッセイにも書いていますが、そちらのエッセイのキャッチコピーが「えっ、また参加するの? 書籍化失敗したのに?」です。
私は、つい先ほどまで、これは実にキャッチーなコピーだなとしか思っていませんでした。
しかし、この第35話を読んで、そうではなかったことに気付いたんです。
カクヨムコンの規定において、「特別賞」は「書籍化検討」です。
これに対して「大賞」は「賞金+書籍化」です。「検討」が無いんです。書籍化「確約」なんです。

私は確信しました。
本気で今度こそ「大賞」を獲りに来た! と。

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