73(最終話)
「うわぁ〜……」
目の前に広がる空を、うっとりと眺める夏祈……。
夕陽が赤々と燃えあがり、重なり合う雲は金色に縁どられている。
「あの時みたい……」
夢として残っている2人で見たあの空を思い出し、遠い聖也に語りかける。
「せーや! ゆーやが、今日から学校に行ってるんだって! 良かったね!もう、元のゆーやに戻ったよね……」
夏祈に応えるように、空が眩しいくらいに輝きだす。
「私のことも心配してたけど……、もう大丈夫! せーやが最後に、凄い世界を見せてくれたから……。あっ、あのLQのレベル? あったかぁい気持ちを貯めて、点数上げなきゃ……。せーやに、また会いたいから!」
『ヘッ、セーヤのお手柄カイ?』
微かに聞こえてくる声……。
「んっ……?」
耳をすましてみる……。
「なんか、聞いたことのある声だったような気がするけど……。今日は色々あって、疲れてるからかなぁ」
思いを巡らせながら……、夏祈は重大なことに気付いてしまった。
「あーーーっ!! あれって! トランペット外されたのって、それって、もしかして、あのミラクルのゾーン?」
血の気が引いていき、思わずベランダのフェンスに寄り掛かかる。
「大失敗! 彩に思いっきり嫌な顔しちゃったじゃん! 得点5倍のチャンスだったのに……」
LQに関しては、なぜか、鮮明な記憶が残っている。
「そうだ! 明日、彩に、“お互いに頑張ろうね!”って言えば、3倍くらいにはなるかもしれない」
『ププッ、ミラクルのゾーン? 一カ月も部活休めば、当然デショ! 』
「……えっ。やっぱり聞こえる!」
『ヤレヤレ、マダマダ、ナツキからは卒業できそうにないナァ』
「こっ、この辺から聞こえる!!」
夕焼けに染まる空の下、プランターをあさる中2女子・大島 夏祈と、葉にぶら下がって必死に茎に隠れている奇妙な妖精・ちっさいおじさん……。
『優しさや思いやりってヤツは、決して無駄な事なんかじゃナイヨ! アッタカ〜イ気持ちは、君達の人生ドラマにしっかりと刻み込まれてるカラネ!』
これが、フィリップルハーパー・ウェディンジェルから、みなさんへのメッセージです!
〜fin〜
ちっさいおじさんと過ごした夏! 華美月 @hatmama
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