地球最後の日

地球最後の日。

あなたには会いたい人がいますか?


そんなCMが少し前から流行り始めた。

今日は地球最後の日。

御伽噺でもアニメでもなんでもない、ただ明日本当に地球は滅ぶのだ。


そんな中僕は、最後の日だからと言って何も変わったことはしない。

地球最後の日もただの1日なのである。


コンビニでチューハイを2缶と、スルメの駄菓子。

結局の所チープな晩酌が1番身に染みる。


プシュ。

この音を聞くのも最後なのだなぁ。

そう思うとプルタブの音でさえも恋しく思えて来るのだから単純な人間である。


生憎話し相手も居ないわけで、1人でツマミをしゃぶりながら1口また1口と胃に流し込む。


人は死んだら星になるんだよ。

朧気な記憶の隅で、母がそう言った。

もしそうなら明日は素晴らしい流星群を見ることが出来るのだろうな。

尤も観測できる人間はいない訳だが。

星たちから僕らは、どのように見えているのだろうか。


「でもまぁ、関係ないか。明日星になるんだもの」


ごくりと最後の1口を流し込み、炭酸の余韻を味わう。


プシュ。

ふいに隣に置いたチューハイから音がした。

「なんだ、お前もやっぱりいるんじゃないか」

返事はなくとも分かるのだ。


どこかの家から漏れ出たCMの煽り文句が聞こえる。


「そうだなぁ。

何の変哲もない最後の日、僕の隣にお前がいてくれて良かったと、今そう思ったよ」


潰れた空き缶と僕と。

明日はきっと晴れるだろう。

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何処噺(いずくばなし) 水鳴咳 辟(みなせ へき) @Minase_Heki

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