能力者(アビリティホルダー)という存在は、架空のものに思えて実は自分たちの周りにもいるのかもしれない。ちょっとだけ人とは違うレベルの能力を持ってみたいと願う時は、少しの間だけ自分自身を振り返ってみるのも良さそう。もしかしたら、その能力に目覚める可能性だってゼロではない。
あとは、その能力を好きになれるかどうか……作中のアビリティホルダーたちは、その葛藤に悩まされ続けながら人生に向き合っている。良い方に流れても悪い方に流れても、後悔の無い思いで描き続ける作者さまの優しい筆使いには癒される。
また、戦闘シーンの描写も素晴らしい。
流れるような体の動きに、周りの無機物なアイテムも巻き込まれ、文字から迫力のある映画のワンシーンを眺めているような感覚を見せつけてくれる。愛宕も拝読していて、飛んできたモノを避けようと頭をスイングさせたシーンがあった。
タイトルの通り、まだ「アルバイト」レベルの主人公なので、今後の本格的な社会人向けスパイ展開も期待したいものです☆
人知れず自分の持っている能力に悩んでいた甲斐少年は、巻き込まれるように『オリヅル』という組織でアルバイトをするはめになります。
この『オリヅル』実はとっても危険なブラックバイト。
めちゃくちゃタフな相棒の折賀少年と共に、問答無用で命がけのミッションに放り込まれてしまいました。
なぜこんなことに! 最初は戸惑いと筋肉痛で大変!
でもそれは、運命の女神が微笑んでもたらしてくれた素敵な絆となって、甲斐少年の日常を温かく彩っていくことになります。
バトルあり、恋あり、ギャグあり、シリアスあり、そして時にホロリとしてしまう……
一言では語りきれないたくさんの魅力が、これでもかと詰め込まれた作品。
盛りだくさんでありながら、破綻することなく、スピード感を持って繰り広げられるミッションに、皆さんも度肝を抜かれつつも、のめり込んでしまうと思います。
彼らは文字どおり世界中へと向かいます。その情景描写は丁寧で、旅をしている気分を味わえます。その横で彼らは大変な目に合っているんですけれどね。
世界には様々な歴史があり、その狭間で悲しい人生を送ってきた人々がたくさんいます。
彼らが出会うのは、そんな人生を背負った人達です。
作者様が真摯に向き合って、矛盾の中でもがき苦しむ人々にも目を背けずに描いていることが素晴らしいです。
そして、この物語にたくさん登場する『能力者』達。
普通なら人より優れた能力は、その人の自信となり助けとなるはず。
にもかかわらず、巨大過ぎる力は、人を幸せにしてくれるとは限らない、寧ろ不幸を呼ぶということも丁寧に描かれています。
だから、敵役でさえも愛おしいです。みんな必死に生きた結果だから。
作者様の登場人物一人一人への愛を感じます。
とびきりの優しい眼差しも感じます。
そしてジャージ少年コンビの清々しいまでに真っ直ぐな思いが、人々の心を、命を、世界までも救ってくれます。
是非是非、この作品を読んでみてください。
まがい物では無い確かな光を、みなさんの心に見せてくれると思います。
お勧めです!
とにかく面白い。退屈なページはありません。隙あらばお笑いをぶち込んでくるし、エンタメ全部盛り。喜怒哀楽・爆笑号泣、感情を極限まで揺さぶられ、もう彼ら無しでは居られない。全話読んでもまだ足りない! もっと読みたい!! 続きをくれー!!!
いや、ちゃんと完結はしているのです。それはもう、壮大爽快大拍手。おそらく誰にも予測不可能、且つこれ以上は望めないという素晴らしい結末。あれだけの壮絶な展開をよくもここまで……この作者、やはり天才!
人の持つ「色」が視えてしまう心優しき主人公、甲斐。その能力故にある組織に属し、相棒と共に世界を駆け巡る華麗な命がけブラックバイト生活を送ることになる。
相棒となるのは、青黒き焰を纏いし神速の帰宅部部長、折賀。念動能力を持つクールなイケメン完璧超人。ただし、重度のシスコンで暴走癖アリ。妹に近づく輩には容赦しない。
折賀の妹、美弥。甲斐の想い人であり、一緒に居る全ての人を幸せオーラで包みこむ天使の如き美少女。料理とマッサージが得意。
さらに、ドS金髪美女の「オリヅル」指揮官、敵組織の拗らせ美少女、ミスター貧乏神、正体不明の輝くハゲ、お笑い盗撮おじさん、タク、その他魅力溢れる登場人物がわんさか。清掃のオバちゃんまでいい味出してます。
世界中の「能力者」を巡って争いを繰り広げる彼ら。能力者ならではの悲哀や葛藤を胸に奮闘し、時に辛い決断を下し闘い続けます。敵組織の頂点は誰なのか。黒幕は? そしてその真の目的は?
全てが明らかになった時、優しい甲斐が選択したのは……
全編を通して、作者の黒須さまの優しい目線が感じられる物語。是非読んで欲しいです!
超能力や特殊能力。今風に言い換えるとチート能力の出てくる創作って、結局は自分探しの物語だと思うのです。『こんな力があれば』『こんな風にできたら』なんて妄想と憧れを懐き、自分にはできなかったことをキャラクターにやってもらう。そして彼・彼女らに物語の中で自分探しを託す。
たくさん前例のある話で、もっと言えばファンタジーラノベは全てがそこに帰結するのではないかとも考えます。しかし、その群れから頭ひとつ飛び出す要素が実はあるのですよね。その効果を実装しつつ完結を迎えたのが『コード・オリヅル~超常現象スパイ組織で楽しいバイト生活!』
オリヅル誕生の経緯、異能者、危機的状況、ヒロインの暴走性など、最初読み始めたときは『涼宮ハルヒの憂鬱』をリスペクトした作品かな? とも思いました。それならそれで展開は予想できるので読みやすいわ、とも。
それが間違いだと気づいたときには、もうオリヅルワールドに惹き込まれていて抜け出すのが困難でしたけれど(笑)
自分の取り柄として速読ができるのですけど、この物語を速読することは出来ませんでした。それ自体はできるのです、しかしやってしまうと細かいところが記憶に残らなくなってしまう。たまにこういう構成の作品があるんですよね。作者が細かい言葉、ひとつひとつにも魂を込めている作品が。心から称賛します。
話は前後しましたが、自分探しの物語から頭ひとつ抜ける要素。それが『短期間での目標認識と達成』です。いつまでも戦い続け、または旅を続けた先で『俺たちの未来はここからだ!』とするのは簡単。それはそれで綺麗な終わり方だと思うし、希望のある話だなとも思いますが、逆に『いつまで探してるんだよ』とか『これだけやって分からないのか』とも思い若干冷めてしいます。
その点、この作品は主人公たちが戦いに巻き込まれてから何年も経たないうちに、それぞれの目標を見つけています。そしてブレることなくラストを迎えました。何を置いても、その着地点へと収めた筆者の胆力が素晴らしい。
本当に楽しい時間を共有できました。
最後になりましたが、ぜひこのレビューを読んでくださった方は流し読みでも良いから読んでみてください。きっと夢中になれると約束します。
超能力を持った少年が無二の相棒と手を組み、あらゆる困難に立ち向かう、アクション型エンターテイメント。でもこのひと言では入りきらないほどその内容は盛りだくさんです。その魅力はすでに沢山のレビューにて語り尽くされていますが、それでもお勧めせずにはいられない。
コメディ、アクション、ファンタジー、そして青春と友情。このすべてを完璧な配分で物語に散りばめられる文章力。行間から漏れ出すサービス精神たっぷりのユーモア。そしてこれだけの長編にもかかわらず決して芯のブレない安定した筆力。もうどこを取ってもご馳走です。ここまで「魅せる」作品ならば、少年少女だけではなく大人もすっかり引き込まれてしまうのは当然。
章ごとに世界を駆け巡る「猟犬コンビ」の活躍のなかに、様々なヒューマンドラマもしっかりと描かれています。ひとの人生、苦しみや葛藤に触れる中で、主人公は自分という存在を問い、生き方に目覚め、章を追うごとに少しずつ成長していきます。そこに単なるアクションものではない深みがあるのです。
軽快で突っ込みどころ満載のギャグや、気持ちの良いテンポでどんどん進んでいく物語、映像を見るような迫力の描写はまさにエンターテイメント作品の醍醐味。
おそらく筆者のライフワークともいえるこの作品には、登場人物に対する愛情、ストーリーや細部への徹底したこだわりがあふれています。そして何より、根底にあるテーマが全編を通して貫かれています。
毎週金曜日の週刊連載からついに完結を迎えた今、今度は単行本として書棚に並ぶ日が待ち遠しい。未読の方にはぜひコレクションに加えて頂きたい、エンターテイメントの傑作です!