2話 監察天使
世界は信仰でできている。
いや、真面目な話なんよ諸君。
初めに楽園あり。
神はそこに人を作り出し、今も人々はそこで暮らしてるとされる。
楽園にしては騒がしいのは、人々が知恵の実を食べたせいだ。
どっかの神は狭量にも「家畜が服着てるんじゃねーよぼけ、追放だ!」とか追い出したらしいが(偏見)、慈悲深いこの世界の神は知恵をつけたそれぞれの意見をもつ人々の為に天使を作り、楽園を細分化した。
かくして各々の持つ知恵毎に棲み分けられた楽園で、我々は今も暮らしているのである。
「まあつまりだ。天使様に願えばお前さんの望むような楽園に送って貰えたんだよ。
お前さんがこんなことしなければ。」
牢屋の前で俺氏は例の令嬢にこの世界の理を説明していた。因果を含めなきゃ逆恨みされそうだからね。
「言ってることおかしくない?どうみてもあんたバリバリの現実主義者なのに、このファンタジーな世界で暮らしてるじゃない!」
「そりゃ、貴族ってのは管理者だからね。その気になれば領土の設定を一括で変えれるのが貴族なんだよ。
現実的な世界に近づけば近づく程、生活は大変になる。誰だって楽に生きられるならそっちを選ぶよ。
頑張った分が必ず報われる世界ってのはファンタジーなんだ。君にも覚えがあるだろ?
そう言う意味でも、教育は民の幸せに直結する重要な仕事なんだ。何処まで教えていいかを学んでいて当然だろ。」
どうも、この令嬢の親御さんはその辺で甘やかしてしまっていたらしい。転生者だからある程度の知識はあるだろう、という思いもあったのだろう。
だが、貴族である以上しらなかったでは済まされない。人と監察天使を繋ぐのが貴族の役目であり、転生者といえどもその責務を果たせないのならば貴族籍を剥奪される事になる。
この娘の様子を見るに、例え悪魔像で騒動を起こさずとも男絡みでトラブルを起こして剥奪されていた気もするが。
「なんにせよ、君は暴力が好きみたいだからね。残酷な現実ありの世界に生きることになるだろう。
せいぜい貞操には気をつける事だよ。ベッドに入って目をつぶればいつの間にか朝になってる家と違って、18禁表現ありありのバイオレンスな場所だろうから。」
さっと青ざめる姿に溜飲が下がる思いではあったが、まあ正直、人が死んだわけでもないのでそこまで酷いことにはならないのではなかろうか。
言ったら反省しないだろうから監察天使さまがくるまではこのままにして置くけど。
ぶっちゃけ貴族なんて天使に仕える神官みたいなもんであり、子供を作れる年齢になったらさっさと作って後を任せ、自分は領地のあがりで世界をまわって楽しむのが普通である。
天使さまもやることきちんとやってればその辺おおらかというか、興味ないみたいだし。
調子にのってやりすぎると知恵を封印されて領地へ帰れなくなるんだけどね。
「はー……。僕ちゃんもはやく子供作りたいわ。そして何もかも押しつけたい。」
「坊ちゃん、そんなだから見合い断られるんですよ。」
牢屋からの帰り道、思わず漏れた呟きに従者が呆れたように突っ込みをいれた。
うるへー、夢位見てもいいだろ。ここは楽園なんだから。俺氏もはやく世界をまわりたいでござる。
レーティングワールド @yasuhico29siki
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