レーティングワールド
@yasuhico29siki
一話 転生者ども
やあ、こんにちわ。ボンクラ貴族の一人息子こと俺氏だよ。
一つ変わった事があるとすれば、ふわっとしたファンタジー世界のありがちな良くも悪くもない平凡貴族の家に生まれた、日本の記憶があるテンプレ転生者だってことかな。
で、今日の問題は目の前に居る婚約者さんね。
「離せ!触ってんじゃないわよ!!」
なんか婚約の話をあっちから急にふってきたのに、家に初めて泊まったその日に宝物庫へ盗みに入った令嬢(笑)がこちらです。
「わからんなー、何がしたかったの君。」
普通に見張りの兵士もボコボコにされるし、昼間は猫かぶりして露骨に俺氏にすり寄ってきてたから今の反骨精神溢れるアウトローな態度にドン引きなんですが。
というかちょっと兵士さんや、流石に弱すぎない?確かに家の領土近辺は平和だけど女の子に負けるなよな。
「あんたの家が邪教に染まった悪徳貴族なのはわかってるのよ!洗脳から解放してあげようってのになんで悪魔像が宝物庫にないのよ!!」
「……あ、ああー。あれね。」
彼女の言葉に、集まってきてた家臣達がまたか、といった顔になる。俺氏もさぞ苦々しい顔をしていることだろう。
奇妙な空気を感じ取ったのか令嬢(笑)が
眉を寄せる。
「あんな呪われた像、とっくの昔に壊したに決まってるじゃんよ。」
「は?」
理解できない、といった顔になる令嬢(笑)に懇切丁寧に説明する気もないので、ボロボロな兵士にとりあえずそのまま牢屋にぶち込むよう指示を出す。
数の暴力で倒したはいいものの、体力が戻ればまたばったばったと倒されるからね。流石に石壁と鉄の柵で囲まれた牢屋を壊して脱出することはできまい。
「はいはい、解散解散。あ、直ぐ手紙書くから、あっちの家と王都に早馬送っておいてね。」
一応善意で動いてたみたいだけど強盗未遂だから放置もできないのよね。犯罪者放置すると舐められるから致し方ない。
「あーあ。どうせならエロいこと致したかったんだけどなぁ。」
「坊ちゃま、また口から妄言が漏れています。」
俺氏が手紙を書き上げるのを待っている兵士が仕方ないなあという顔で窘めてくる。
「だってさ、あんなワガママボディで胸を当ててんのよとかやられたらそりゃあ期待しちゃうでしょ。僕ちゃんもそろそろ成人よ?」
「誘惑されてようが婚前交渉なんてしたら家の恥かと。レーティング教会に改宗を命ぜられたりしたら大事ですぞ。」
「ばれなきゃいーじゃん。どうせ他の家だって避暑とかにかこつけて18禁教区でアヴァンチュールしてんだからさ。」
と、駄弁っているうちに手紙も書き上がったので蝋で閉じて兵士に渡す。
いつも思うが、あんな蝋で印押した程度ではちょっとした弾みで剥がれるのではなかろうか。べったり糊付けしたら怒られるかしらん。
物騒な話ではあるのだが、実は家の宝物庫にある悪魔像とやらを狙った侵入者は今回が初めてではない。
そもそもこの世界、前世の記憶を持って生まれる人間は珍しくもないのである。
おとぎ話で賢者とか言われた人達や、有名な発見をした学者やらの多くは別世界の記憶をもった転生者であるとされている。俺氏と同じく近代科学で成り立つ社会からきた人もいれば、妖精だったとか失われた時代の魔法使いだったとか言う話もある。
最近多いのが、この世界がゲームだと曰う人々だ。彼ら曰く、家は悪魔像で洗脳され悪事の限りを尽くす悪役貴族らしい。
その悪魔像、とうの昔に破壊されてんだよなぁ。王都の博物館いけば普通に飾られてんだけど、あの様子じゃ知らないんだろう。
先祖がレーティング上げてなきゃ呪われたままだったんだろうけどね。
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