個性的な神々が美しく嘆き出す。旋律と戦慄のミソロジー。

本来難解なギリシャ神話が、驚くほどわかりやすく書かれています。

ギリシャ神話に出てくるオリュンポスとティターンの神々の設定をしっかりと踏襲しながらも、それらが個性的なキャラクターになっており、読者を楽しませます。特にアフロディーテさんが良いキャラしていました。

また、これは神々の戦いに巻き込まれた人間——主人公エストリーゼの成長物語がメインストーリーとなります。
神話の世界観を味わいつつ、一人の人間のドラマをしっかり感じることが出来ます。
神話の体系を崩し過ぎず、しかし固くなり過ぎず、オリジナリティが溢れている。このバランス感覚は相当素晴らしいと思います。創作する側の人にはこのバランスを保つ難しさがわかると思います。しかし、その難しさを読者には感じさせないと言うのがまた凄い。実は私は読んでいる最中に「これは難しいぞ」と感じなかったのです。こうしてレビューを書くにあたり、ストーリーを振り返ったときにようやく「作者は相当難しいことをやってのけている」と気付いたくらいです。それくらいにストレスフリーでした。

一話一話が大変短いので、僅かな隙間時間で読むことが出来ますし、自分の好きなタイミングで栞を挟むことが出来ます。短いと言ってもシーンがぶつ切りと言うわけではないので、一気読みも可能です。大変重い話のときも少しずつ進められるので、自分のお好みに合わせた読書が出来るのもこの作品の良いところだと感じました。

ギリシャ神話を知っている人はもちろんですが、知らない人も楽しめる内容だと思います。これからギリシャ神話を知りたいと言う人にもお薦めします。

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