第6話 愛妻は大体椅子の距離が離れていても微笑んでます。

2020年8時某日。ー つい四ヶ月前までは何事も無く営業していた,坂口が店主を勤める居酒屋は新しい営業様式を採り入れた。それが今年の春頃から本格的に拡大してきた【とあるウィルス】による感染症が流行ったからだ。坂口は保健所からの指導も【とあるウイルス】が流行り始めるそれ以前からあり、マスク着用とアルコール消毒の徹底、人数制限を設け,常連客にも協力を促してもらう事に坂口は申し訳なさと不甲斐なさを感じていた。それでもそんな彼を責めない常連客もいる。例えば今,目の前でお互いに席の間隔を空けて座っているこの歳の差夫婦,梨男と綾子だった。彼らは言う。『今,こういう混沌とした状況だからこそ,人との距離は出来る限り間隔を空け,保ちつつも最低限のマスク越しの会話は必要だ。』と。今日も屈託なく店はこの二人の温かい眼差しで賑やかさを取り戻している。ー

 ここまで長期化するとは思わなんだ【とあるウイルス】だが,それでもこのお三方はいつも通りの店の雰囲気を作っている。他愛もない事だがそれでも温かさを感じる今日この頃でそろそろお開きとしましょう。

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