第2話 愛妻の愚痴はいつも大体ココで聞いています。

とある日曜日。妻の綾子は唐突に私に相談というか、愚痴を居酒屋で飛ばしてきた。

「聞いてよ、梨男さん。一昨日のパートでの金曜日のシフトで私の顔を見てストレートにおばさんって言ってくる奴がいたのよ。」

私はその愚痴を静かに聞いていた。何でも言った相手は歳の頃は20歳の女子大生できっかけは綾子がパートしているスーパーのレジで値引きをしてくれなかったという事らしい。綾子は戸惑いながらも丁重に値切りをお断りしたのだが、その女子大生は尚も値引きをしろとしつこく催促をしてきたというのだ。

「ほんで、また更に断った挙句の果てに綾子さんをおばはん呼ばわりしたっていう事ですかいな?」

「そうよ、その通り。酷い話でしょ?」

「酷い話かな、それって。」

僕は妻の愚痴を否定するような発言を思わずしてしまった。妻の【何よ、それ。】という怒りをよそに話を続けた。

「綾子さんがおばさんって呼ばれて僕はその女子大生に怒りよりも哀れみを覚えたよ。」

「哀れみ?」

「そう、哀れみ。誰だって年はとる物だろう?僕だってこの顔になる前からおじさんって呼ばれることが多かったし、君だっておばさんって呼ばれるまでに年をとっただろう?いつかはみんな年をとるんだって言うのを人はどこか忘れているんだよ。それに綾子は今のその顔だって年季が入ったことによって美しさが増しただろう。だからおばさんって呼んでくる相手には開き直っといた方がいいんだよ。」

その言葉を聞くと綾子は頬を赤くして【酒が回ってきたのかしら、顔が熱くなっちゃった】と言った。

「おっ、梨男はん。どさくさに紛れて嫁はんへの惚気でっか?」

店主の坂口さんのそのからかいに私は【別に惚気けてませんよ】と返した。

さあ~、そろそろ2話もお開きとしましょうか、お客さん。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る