第3話 愛妻は大体私の知らない知り合いを紹介してくる

今日の梨男は何故か分からないがモヤモヤしていたりイライラしている。その現況は目の前にいる【コイツ】だろうか?梨男の左隣に妻である綾子の知り合いだという男がさっきから延々と長話をしている。痺れを切らした梨男は綾子に問い質した。

「なぁ、綾子さん。説明してくれ。さっきから君と話している彼は一体誰なんだ。」

元彼だったらという不安もあるから梨男は語気を強めたが、綾子はあっけらかんとして答えた。

「何?梨男さん、彼を知らないの?私たちの結婚式に参加していた人よ、この人。」

すると梨男はその男の顔を見た。そして、思い出した。

「あぁ、君はあの時、結婚式で綾子さんの放り投げたブーケを受け取ったメガネの男の子か?」

「はい、警視庁臨海警察署生活安全課に勤務している風吹健です。綾子さんとは高校の時の先輩後輩で、最近メガネからコンタクトにしたんです。気付きませんでしたか?」

気付かないどころか、メガネを外したらこんなイケメンだなんて誰が想像するかという気持ちを梨男は健に抱いた。

「今日は婚姻する女性との結婚式の為にわざわざこの店で綾子さんと旦那様の梨男さんにご報告したかったんです。」

何だそういう事だったのかと梨男はふと一安心したら店主の坂口がヤケにニヤニヤとこっちを見ていた。

「何ですか?坂口さん。」

「いやー、もしかして梨男さん、嫉妬しはったんちゃいますか?この兄さんに。」

坂口の嬉しそうな顔にムカッときた梨男はそんなんじゃありませんよ。といい徳利に入っていた日本酒をぐびぐび呑んだ。そして、心の中で【俺は綾子さんの旦那だぞ。嫉妬ぐらいするわ、バーカ。】と毒づいた。

今宵もこの辺でお開きとしましょうか、お客さん。

第三話 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る