大人だって間違える、でも成長もする

タイトルからは「あー、不幸なおっさんが偶然手に入れた優秀スキルでウハウハなサクセスストーリー送る、テンプレ的で、あまり深みはない物語ね、きっと」って印象を受けます。
実際、軽快で読みやすい文章のもと、優れたスキル持ち主人公が、ダンジョン探索を行うお話ではあります。

ですが、その一見テンプレでライトな物語のなかに「大人として現実社会で生きていくってどういうことだろう」というテーマがしっかりあるので、「軽快」でありつつも「軽薄」ではありません。

経済事情や家庭問題という、大人が現実社会の中で向き合う問題に主人公は遭遇し、危険なダンジョン探索という仕事の中での若者との関わりは、主人公がそれらについて考えていく上でのきっかけとなり、一助となります。

主人公がおっさん、舞台が現代でダンジョン、ヒロインは女子高生、ありがちに見えるテンプレ設定が、この作品ではテーマを語るための重要な要素になっており、意味を持って活かされています。だから納得感があり、軽薄さを感じないんだろうと思います。

モンスターとも戦いますが、主人公が本当の意味で戦う相手は、大人として未成熟な自分自身です。
最終話まで読むと、「もっと先が読みたい」とも思えるし、「この話数で完結するから良いんだ」とも思える、そんな素敵なお話です。

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