設定や文化・風習が細部まで作りこまれていて、巧みな文章力も相まって、読み始めた瞬間に情景が浮かんできて、一気に物語に引き込まれました。
まさに正統派・王道という言葉に相応しい物語で、魅力的な主人公達や先輩達、手強い敵役と、登場人物も多種多様でそれぞれが独自の考えを持って生きています。彼らの生き様も、この物語の魅力の一つです。
戦闘場面も本格的で、一対一の戦いや魔法を駆使しての戦いもさることながら、集団を動かしての戦争描写も緻密に描写されていて見事です。
壮大な世界観で紡がれる重厚なファンタジー戦記を読みたいという方には、心からお勧めしたい作品です!
一言で言うと生々しさのある剣と魔法の世界の戦記物です。王道です。
ただの一人も異世界からの転移者も転生者もおらず、主人公に女性達が群がって媚びてくるわけでもないし、最初は何もできないと思いこんでる主人公がとてつもなく強い力をお手軽に授かって周囲を肉体的精神的に縦横無尽になぎ倒し成り上がるわけでもないです。
そう言うのが良いという人にはおすすめできません。
特殊な生まれではある主人公が努力して魔法を覚え剣を身に着け、愛し合う恋人とすれ違って落ち込んだりしながらときに冒険をし、ときに戦いに身を投じていきます。
信頼できる仲間もいれば敵もいて、国の思惑が絡み合い裏で暗躍する者達がいてそれぞれに目が離せません。
主人公だけでなく、その話その話でスポットライトを浴びる人物がいます。皆感情があって活き活きしています。
悪役も便利なただの“悪”と言うわけではなく、様々な思惑や感情があります。
感情や情景の描写が丁寧でわかりやすく、ときにコミカルだったりシリアスだったりな話に感情移入してしまいます。
わたしの文章力ではとても表しきれません。
面白いのでぜひ読んでみて頂きたいです。
ハイファンタジーと言われて期待するものが見事に体現された作品でした。
剣と魔法の世界を舞台に一人の少年の苦悩と成長、愛を描く王道物のストーリーですが
そこに登場する世界観、社会、風土、人物や戦場における戦術、心理に至るまで極めて丁寧に描かれており、
登場人物が豊富にも関わらず一人一人が埋没することも無く
それぞれが独自の魅力を持ち、輝きを放っています。
同作の現時点での話数は相当な数に及んでいますが、
長編物にありがちな中だるみもなく、最新話まで全速で駆け抜けるような展開に引き込まれ
他のフォロー作品もそっちのけで最新話まで読了してしまいました。
張り巡らされた伏線や未知の部分がまだまだ残されており、
まだまだ主人公たちの旅を見ていられそうでこの先が楽しみです。
昨今巷に溢れる転生物、チート物に疲れた方には是非お勧めします。
■物語創作におけるオリジナリティとは何だろう?
この問いかけにわかりやすくシンプルに答えられる人間はそうそういないだろ。
■少なくとも〝誰とも似ていない〟とか〝類似しているものがない〟という意味ではないのは確かだ。
■ならば何をもってして〝オリジナリティ〟と呼べば良いのだろうか?
■それに対する明確な答えを持っているのがこの作品である。
■例えばである。古典的な芸術の一つであるクラシックバレエ、その演技方法、表現方法、足の運びから練習方法に至るまで、その中身は事細かに規定され演者の個人的な意図を差し挟む余地は全くないかのように見える。
■事実、経験の浅い初心者のそれは〝マニュアル通り〟と呼ぶにふさわしい代物でありオリジナリティがあるとは決して言えない。
■しかし、これがメインステージの主役を張れるほどのプリマドンナとなれば話は変わってくる。
■その身のこなし、演技、テクニック--、あらゆるものがクラシックバレエの基本的技法に成り立っているにもかかわらず、その舞台との演技を総合的に見た時に明らかにバレリーナ本人の『確かな個性』が存在しているのである。
■これは何もクラシックバレエに限ったことではない。ロックバンドだってそうだろう。使用する楽器、演奏方法、表現スタイル、歌唱法--あらゆるものが共通化されてるのには関わらず、バンドそのものを全体的に見た時にやはりそこには明確な個性とオリジナリティが存在しているのである。
■そうだ、それこそが創作におけるオリジナリティなのである。
■本作品はハイファンタジー作品としてはある種オーソドキシーすぎるほどに基本に忠実な作品である。しかしだからといって何かに似ているのか古典の模倣であるということは決してない。
■一つの王国の中で明確な社会と生活のコミュニティがあり、そこに生きる一人一人に〝命の息遣い〟が存在しているのである。そして、物語の大きなうねりとしてそのスタート地点に存在している人物こそが主役の〝ユーリー少年〟である。
■彼の生活と志と冒険とその旅立ちを見守ってほしい。そこに素晴らしきドラマが見つかるはずである。