Let It Be

万年負け戦と言われていた富岡西中野球部は、引退試合を控えた最後の練習試合でも覇気がなかった。ホームランはおろか、ヒットさえろくにでない。しかし、一回だけ、風が吹いた瞬間があった。七回表、キャプテンの大木が三塁打を放ったことで、偶然にも一点が入る。
結局、その試合では追加点をあげることなく俺たちはコールド負けしまう。しかし負けても感触は残される。ヒットを打つ快感。塁まで走る興奮。得点を取った感動。それはあまりに遅すぎる反省で、そして大きすぎる決意だった。
俺は——。
俺たちは、試合で勝たなければならない。