素直になれない俺の話
第1話 負け続けの中学時代ってのも、悪くないよな1
引退試合を次に控えた、最後の練習試合。その三回表で、俺は打席に立っていた。
全身の穴という穴から汗が噴き出るような白熱の炎天下で、適当にバットを握る。
ずきり、と頭が痛んだ。
うまく力が入らないのは、暑さのためでも、ましてや緊張のためでもない。単に俺のフォームが、全然なっていないのだ。イカやタコがバットを握っても、もう少しマシな格好をする。そのくらいに姿勢が悪い。
マウンドに立つピッチャーが構えた。俺たちみたいな弱小と練習してくれるぐらいだから、相手チームもそれなりに弱い。当然、ピッチャーの姿勢だって、あまり綺麗ではなかった。少なくとも、テレビで見た甲子園球児たちの姿勢とは程遠い。
投手と打者の真剣勝負、などという言葉はこの場に存在しない。暑いから早く試合終わらないかな、などとやる気のない俺と、そんなやる気のなさを察知して適当に投げてくる相手チームのピッチャーは、勝負しているというよりかは嫌な仕事を渋々協働している関係に近い。
やる気がない、といっても、球が打てたらさすがに気持ちいいから、相手が投げてきた緩いストレートを目一杯にらみつけてバットを振った。
しかし第一球は、空振りに終わった。
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