6つのヒントは確かにあった

 恵理子が夢占いにハマった。昔からこう言った根拠のない不明瞭なことが好きな女性ではあったし、なんなら、もう夢占いにハマるのは何回目のことか――といった程度の周期で巡ってくるブームである。少し前は偉人の名言をよく調べたりしていたが、こちらも実際のところ真実なのかは私たちにはわからないという意味では、共通した趣味である。


 仕方なく、私は夢を見るたびに彼女にその内容を伝えている。


 今日は、棚卸をしている最中、ずっと卵の数が合わない――妙な夢だった。


「えーとね。卵卵……」

 

 スマートフォンを擦る動作をじっと眺めながら、頭の中では、実際にそんなことがあっても簡単に誤差として終わりなのにな、と考えていた。


「あった。卵は——現在や将来に対する暗示。うわ、恋愛面についての場合が多いんだって。思いを寄せてる異性がいるとか。え、浮気?」


「まさか」


 


 ——まさか、なあ?


 頭の中で逆転していく構図を、結局私は、根拠なんてないんだ、と放り投げた。私は当事者ではないし、当事者は、もういない。

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