ショートショートや短編は短いことを利点にしなければならない。
それは、単に説明不足や文章力の低さ故にそれらに「逃げた」と思われないためにだ。
その点この作品は起承転結の全てが、コンパクトにまとまっており、作者の言いたいこともすんなり伝わってくるし、固有名詞の数も程々で読みやすい。
内容も優れており「何か一つだけ願い事をかなえるなら」という、もはや永遠の問いとすら呼べるこの疑問に対して、かなりオリジナリティーのある答えが提示されおり、なるほどと納得できる。
文章力、こと会話表現においてもかなり優れていると感じた。会話のリズムや内容を含め、実際に人間が話しているように読者に読ませるのは至難の技だが、この作品はそれをやってのけている。
オチを含めた作品全体のまとまりは、短さの美と呼べるだろう。
執筆お疲れ様でした。
短い中で、意外な展開と哲学的な人生観が無理なく描かれた秀作です。
主人公が魔神に頼む願い事と、滅ぼされた自国に対する思いの意外性に興味をそそられ、
その考えの根底にある人生観にはなるほどと唸らされるでしょう。
この内容をこの尺でまとめる構成力と、会話を中心とした文章もとてもお上手です。
特に、文章は削ぎ落とした簡素なものであるにもかかわらず、全く安っぽいそれでなく、素晴らしいです。
また、会話の中にユーモアも注がれていて楽しく読めるのも嬉しいところです。
会話中心の削ぎ落とした文章と意外な展開、読み手に哲学的な発見をさせるところなど、星新一の作品を彷彿とさせますが、星新一作品がやや悲観的であったり毒の強い余韻を残すのに比べ、この作品は気持ちの良い読後感です。
爽やかな余韻を楽しみたい方にもおすすめです。