第2話 スポット・ジャンキー

都内某所で、僕は通勤している。

今日は平成が終わる日。

満員電車という世界でもっとも人口密度の高いと思われる場所にいるというのに、愛や慈悲に溢れた顔をした人間はいない。

記念日にも働き、安い賃金を貰い、飯を食い、安い服を買い、女に抱かれる夢を見ながら、死んだ様に眠る。

ふと目が覚めると午前零時、テレビをつける。

令和元年、新しい時代の始まりだ!

「令和は素晴らしい時代にしたい」「少子高齢化を令和で止めたい」

ブラボー!素晴らしい心意気だ!

皆さんはそのまま素晴らしく無様な姿を永遠と晒し続けていただきたい。

文化だってそうだ。

映画、音楽、ナードポップカルチャー、全て素晴らしく無様だ。

醜い欲望をそのまま表し、馬鹿なオタク共がそれに釣られ、なけなしの金を払う。

勿論、全ての物は無様だ。

それは俺だって例外じゃない。

そんな中で、上手く流行に乗り、もてはやされる。そんな人間はいつだっている。

俺は鉄の塊に乗って命を揺らせる程に強い人間ではない。

ふざけるな、こんなの不平等だ。何故奴等に視線が集まり、俺の様な人間は注目されないんだ。

そんな自問自答は何回も繰り返してる。

昔、とある本を読んだ。

人が一番恐怖する物は死では無く、孤独らしい。


人間なんて、誰もがスポットに当たりたいスポットジャンキーなのだ。

スポットに当たる瞬間だけ、誰もが我を忘れ、快楽に浸る。


布団に入り、夢が自分の本体なのだと叫ぶ。

今起きている現実こそが夢であり、夢の方が現実なのである。

虚しくないのか、と言われれば虚しい。そんな事を言ってしまったら終わりだ。

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ウェルダー・デイニーズ・ナイト 透明少年 @kozikozideath

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