ウェルダー・デイニーズ・ナイト
透明少年
第1話 夜
世の中というのは、あまりにも不平等な物である。
中学校、不器用で勉強も運動も出来なくなった俺の成績はどんどんと落ちてゆく。
周りの人間達は続々とコミュニティを作り、愛人を作り、愛を育んでゆく。
どうしようもない孤独が俺の頭の中を包み込み、今でもそれは離れない。
俺は誰にも愛されていない、なんて事実は随分と昔から分かっている事なんだ。問題はその孤独をどうやって埋めるかだ。
ありふれた夜を何回も過ごし、自分の脳内で作った架空の愛を受け取り、自分を変えようと何回も思った。
何か行動を起こさなければ、何かしなければ。
だが現実というのは非常である。
神様はありふれた孤独の中にいる僕を助けようともしない。
死が怖いのでは無い。本当に自分が存在しているのか、存在していないのか、そんな現状にいる自分が一番怖いのである。
朝、電子的な音に起こされ、目を覚ます。
汚れているのか汚れていないのかすら不明な部屋の片隅でうめき声を上げながら身体を起こすと、汚れている皿がテーブルに置かれている。
昨日の晩飯で使った皿、今洗うべきなのか、洗ったら沢山の美女
が家に駆け込み、愛情をくれる。そんな事が起きるのならば。
いや、恐らくやらない、そんな事が起きても、僕はまず愛情を受け取れない。
重い腰をあげ、汚れた皿を横目で見ながら仕事場に行く準備をする。
寂れたバッグ、安物のジャケット、ヨレヨレの靴を履き、玄関を出る。
これが浅井雄介という男の人生の全て。
報われたいなんて誰だって思ってる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます