散りばめられた優しさと深みのある思想満載のエッセイ。

 概要の部分に
「生きることは恥ずかしいことだらけ」
 と書かれていて、本当にその通りだな、と思います。

 更にキーワードには
「赤っ恥/残念な話/日常/すっとこどっこい/ゆるい生活/ノスタルジー/老い/」
 と並んでいて、
 切り株ねむこさんは本当に素直に、このエッセイを書かれているんだな、と感じたりもする訳です。

 実際、読んでみると一編一編にコメントを寄せたいくらい興味深い内容で、同時にどんどん先を読みたい要求が同時に沸いてもくるので、
 非常に困った状態に僕は落ち入りました(結果、次々と読む方を選びました。コメントは後からもできますし)。

 エッセイは日常を切り取ったものが基本ですが、
 切り株ねむこさんの視点はあくまでゆるく、可笑しみに溢れ、時々すごく優しくて驚きます。
 応援するとか、背中を押すとか、そういう形は取らず、ただひっそりと横にいてくれるような安心感。
 切り株ねむこさんのエッセイからは、そんなスタンスが垣間見えます。

 かと思えば、思想的な言葉が不意打ちみたいに現れたりもします。
 例えば、以下のような一節です。

『私は熱心な読書家ではないものの、
 何かに悩んだ時に、
 正論は頭で分かっている。
 でも、相談をして誰かにそれを聞きたい訳じゃない。』

 これなんて、印刷して壁に貼って毎日でも眺められる名文ですよ。
 しかも、この後に
『そんな時にも本を読んだりします。
 自分の今の気持ちに寄り添ってくれる本を探して。』
 ですよ。

 20代前半に失恋した後、よしもとばななの小説を常に持ち歩いていた僕は共感の嵐です!
 またまた、別のエッセイでは、

『実は私は私が一番信用出来ないのです。』

 とあったりして、その感覚もとてつもなく分かる。
 分かり過ぎて、ちょっと辛くなるレベルです。

 そして、そう素直に自分の感覚や感情を書かれる切り株ねむこさんを僕は最も信頼できる書き手だと思うんです。

 長々とすみません。
 これからの更新も楽しみにしています。

 最後にですが、僕は切り株ねむこさんの息子さんのエピソードで、だいたい笑っちゃっています。
 最高だ、この子っ! って。

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