第2話 01

01


大樹へ捧げる収穫祭は受け継がれる。


翌年の巫女は前年の巫女の妹であった。

一家は巫女の一族として丁重に保護されていた。

妹は姉の身にあったことを知らなかった。

長老と村長は多くを語らなかった。

唯々、祝福されたと。


大樹の祝福により村に多大な恩寵が得られたと教え込まれていた。

村は姉によって救われたのだ聞き、自分が巫女に選ばれた栄誉と誇りを噛みしめていた。

収穫祭に焦がれ、大人たちの騒めきは期待の証かと思っていた。

村には新しく生まれた子もおり、賑やかさには未来の不安と期待が入り混じっていた。


姉との再会を待ち望み、収穫祭の後に森へと導かれていく。

森へと踏み込めるのは君が特別な巫女だから。


大樹には先代巫女の姉が絡み取られていた。

姉は別れた先年より育ち、美しく実っていた。

慈愛に満ちた目を閉じて、祈りを捧げていた。

姉の名を呼ぶが返事はなく、心は大樹に向いたまま。

たまに祝福の言葉が漏れ聞こえる。。


しかし、その姉を妹は美しいと思ったのだ。

姉と大樹に祈りを捧げ、身を預けると慶びの声がもれる。


同じものはいらない。


大樹は新たな巫女を必要としなかった。

妹にはそれがひどく寂しいことであった。

私はあの様に姉の様にはなれない。

最初が自分であれば望まれたのだろうか。


長老と村長は巫女を連れ帰れることに安堵しつつも不安を覚えた。

だが、村人の不安は杞憂であった。

翌年も翌々年もその先も妹が巫女を続けるが、大樹は彼女を必要としなかった。

妹は会う度に姉がより一層美しく思え、焦がれるのであった。

そして彼女は巫女で無くなり子を産む。


娘が生まれた。

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