第4話 17

17


収穫祭の儀式を止めることは誰にもできない。次の巫女は前の巫女の妹であった。

同じように育てられたが、母の言うことは妄信だと思っていた。

叔母が美しいのも事実だろうが、自分の望みではなかった。

それでも巫女を引き継ぐ誉はあったのだ。


長老や村長は恐れる。

二人目が全てを変えた。

巫女の生活を村人から隔離した。

巫女の顔を晒さぬように隠した。

祭司が必要だと長老と村長はいった。

二人で負うには限界がきていた


巫女はより手厚く世話をされた。

巫女はこれは良いとさえ思った。

収穫祭になれば姉にも会えると楽しみにしていた。

収穫祭はさらに立派になっていった。

ほとんどの者は祝福された村だと信じていた。

今年も森への道が開かれる。

祝福された道、それほど期待はしていないが楽しみではあったのだ。

美しい叔母は大樹に包まれ祈りを捧げ続けていた。

一年ぶりに会う姉も大樹に包まれ眠りについていた。

儀式のために大樹へ近づく。


お前にも分けてあげよう。


大樹に囚われた姉が目覚め、叔母も瞼から虚ろを覗かせる。

人形となった叔母は、姉を覗き込んで優しく微笑むが姉は震える。

優しくなでまわし、悍ましく弄る。

やがて掻き毟り、引き裂き、貫く。


ほら、いろいろな声が聞こえるだろう。


姉の声、自分の声、もう誰の声か分からない。

姉には声が届かない。

髪に隠れているけれど、有るべき位置には既に無い。


夢だったのだろうか、気付けば村に帰っていた。

祭司は疲れたのでしょうと何も答えてくれなかった。

けれどやってくるのだ、来年も再来年も、ずっと。

あれは夢でなければいけない。

何年も経ってから子を産んだ。


生まれた娘を見て涙を流した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る