第6話

翌朝から俺と妹は前にも増して話さなくなった。前は必要なことくらいは話していたがその会話すらもなくなった。だが学校では完全無視ともいかないわけか顔を合わせた時くらいは挨拶をする。その程度だ。

「な、んか清々したな·····」

ようやくあの妹と話さなくて済むわけだ。これ程清々することがあっただろうか。·····そう。もう話さなくていいんだ。

「本当にそれでいいのかよ」

·····なにがだよ。そう言ってやりたかった。でも·····言えなかった。

「··········」

「お前は妹に勘違いされてこのままでいいのか?」

「いいわけ·····ないだろ」

·····そうだ。あいつと関わらくて済むのはむしろ感謝だ。でも·····変態と思われたまま一生はさすがに笑えない。

「·····俺少しトイレ行ってくる」

「·····ああ、ちゃんと謝ってこいよ」

「トイレ行くだけだし!?」

·····くそ。確かにトイレのついでにあいつともう一度話そうとは思ったけどな!しれっと照れ隠しをあばかないでいただけるかな!?俺はダッシュで結衣の元へと向かった。別に、あいつと仲良くなるためでは断じてない。昨日の夜の誤解を解くためにだ。

「くそ、どこ行きやがった·····!」

いつもならなにかと目立つやつだから簡単に見つかるのだが今日は何故か見つからない。もう、学校中探したはずなのに·····あ。そういえば。

キィ·····

いつもなら開いていないはずの屋上へと続いている階段のドアは開いていた。いつもなら鍵がかかっているはずだ。おそらく屋上に誰かいるのだろう。

「·····いるのか?」

ゆっくりとドアを開ける。見た感じは誰もいないみたいだ。

「おーい·····」

ゆっくりと影へと進む。さすがに誰もドアから出てすぐ目立つところになんていないだろう。そもそも落ち着かない。

「·····おい」

想像通り結衣は·····屋上にいた。夢の中みたいだ。すっかりと眠りについている。よくこんなところで熟睡できるな·····こいつ。

「おい、起きろ。風邪引くぞ」

風邪を引かれたら面倒だ。こいつが俺を見て何を言ってくるかは知らないが一応起こした方がいいだろう。

「おい、結衣」

軽く肩を掴んで揺さぶる。結衣の上半身が揺れる。·····ついでにこの胸も。ちょっと前まで全然胸もなくて色気のへったくれも無かったのにいつの間にこんなに成長したんだろう。·····ってそんな雑念は消せ!俺!実の妹の胸を兄が凝視していたなんて他の人に見られたら言い訳もできない!

「おい、いいからさっさと·····」

そこまで来て俺は揺さぶるのをやめた。·····よく考えたら今ここで起こしたら逆にやばくないか。こいつの事だ。また変な想像をして今度は寝ているところを襲われたなんて勘違いされてみろ。もっと過ごしずらくなるだけじゃないか!

「··········」

俺は少し離れたところに座り込んだ。下手に行動するよりはここで結衣が起きるのを待ってる方がいいんじゃないかと考えたんだ。

数十分後、結衣はちょっと声を上げて目を覚ました。そして·····想像通り勘違いをして屋上から全速力で逃げていった。何故だ。俺は何もしていないだろうが!無実だ!

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