学校のアイドルとまで評される妹は実は根っからのオタクだった
早龍アイ
第1話
誰からも好かれ、入学して数ヶ月で学園の頂点まで君臨した少女がそこにはいた。誰から見ても気高くそして美しい。俺だってきっとその少女のことをひと目で好きになっていただろう··········それが実の妹でなければの話だけどな。
「結衣さん、荷物持ちますね」
「お疲れじゃないですか?結衣様」
廊下には人だかりが出来ていた。何も知らない人から見たら有名人でも来ているのではないかと思うほどの人だかりだった。
「大丈夫よ、みんなも忙しいのだろうからあんまり無理しないでくださいね」
ニコ·····
その人だかりの真ん中にいる一人の少女が周りの人に微笑んだ瞬間辺りは1度静まり返り、そしてまたどよめきが起きる。
「·····あいつまた猫かぶってやがる」
何も知らない人から見たら美しくそして優しい少女に見えるのだろう。それは·····何も知らない奴から、見たらな。
「祐はいいよな、あんなに可愛い妹がいてさ」
「いくらでもくれてやる、妹なら」
「おいおい、そんなこと言ってていいのか?」
·····いいんだよ。俺だって、あいつだってきっと交換してほしいって思ってるんだから。
「じゃあ、行きましょうか」
しばらく立ち話をしていると結衣がこちらへ歩いてきた。俺は早歩きでその場から離れだした。
「おい、ちょっと待てって」
後ろから声がするが今止まる訳には行かないのだ。許せ、友人よ。
スタスタスタスタスタ·····
ドンッ!
「きゃっ!」
「あ、ごめん。大丈夫?」
気がつくとかなりのスピードで歩いていたらしい。人の姿は見えなくなっていた。今、目の前にいるであろう声の主以外は。
「だ、大丈夫です。あなたこそ大丈夫ですか?」
「あ、ああ·····、俺は大丈夫」
「ならよかったです。じゃあ、これで」
声の主は俺よりかなり背の低い少女だった。白くてふわふわとした髪。少し緑が混ざった青の瞳。ソプラノでよく通る透き通るような声。·····文句なしの美少女だった。
「あ、·····」
「·····どうかしましたか?」
俺はつい彼女を見て止まってしまった。そんな俺を見て歩き始めていた少女の足も止まる。·····やばい。つい引き止めてしまったが何を話せばいいんだ?
「い、いや、なんでもない。引き止めてしまってすまん」
「いえ、なんでもないなら結構です。あ、歩く時は前に気をつけた方がいいですよ。じゃあ、私はこれで」
その少女は一言添えていくと向こう側へと歩いていってしまった。俺はしばらくそのまま呆然とただ立ちすくんでいるのだった。
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