第4話
「寒·····」
外は昼間とは違い寒い風が吹いていた。頼まれて外に来たはいいが今すぐに家に引き戻りたくなる。
「こんな中アイス食うとか正気の沙汰じゃないよな·····」
いわゆる寒い日でも暖かい室内で食べれば美味しいのよ!ってやつなんだろうか·····。
ガー·····
「はぁ·····暖か·····」
室内はとても暖かかった。外の寒さを忘れそうになる。
「少し、コーヒーでも飲んでから帰ろうかな」
アイスは帰る少し前に買えばいいのだ。少し温まってから帰ろう。コーヒーメーカーに容器をセットするとしばらくの間待機する。この待機時間が俺は好きだった。近くに湧き上がるコーヒーの匂い。暖かい中でコーヒーが出来るのをじっと待つ。そうして出来上がったコーヒーを1口すするのだ。コーヒーが苦手と言う人もたくさんいるが俺はコーヒーが好きだった。なんか長々としてしまったが一言で表すと俺はコーヒーが好きだった。
「ってもうこんな時間かよ!」
気付くと1時間もたっていた。いくらぼーっとしていたからって時間経ちすぎだろ!
「ありがとうございましたー」
俺はアイスを買うと全速力で家へと走った。行きで感じた寒さなど全然感じない。むしろ暑い。
「ただいまぁ!」
バン!
「どこのコンビニまで行ってたの」
リビングに入ると母さんが驚いた顔でこっちを向いた。
「い、や·····ちょ、っとな·····はぁ·····」
息が苦しい。全力で走りすぎた。今にも倒れそうだ。
「少し水でも飲めば?」
「そ、だな·····はぁ·····」
俺は深く椅子に腰かける。少しでも休憩しないと死んでしまう。
「ふぅ·····少し風呂入ってくるかな」
「んー」
母さんの気の抜けた返事を聞くと俺は着替えを取りに部屋に行く。そして着替えを持つと脱衣所のドアを開けた·····中には裸の結衣がいた。
「っっっ·····!?」
顔を赤くさせ言葉にならない悲鳴をあげる結衣。顔を赤くさせているのは俺も同じだった。
「な、ぁ!?ご、ごめん!!」
バタン!
そして勢いよく扉を閉める。ま、まさか結衣がいるなんて思わなかった。
「さ、さっき入ったんじゃなかったのかよ!」
「あ、祐ー、結衣がお風呂入ってるわよー」
「遅いよ!」
そういうのは先に言えよ!見ちまったじゃねぇか!!
「お、おい。もう、着替えたか?」
コンコン
「··········」
キィ·····
「そ、そのすまん。わざとではないんだ」
「···············い」
「え?」
「··········変態」
·····終わった。完全に今のこいつの目はゴミを見る目だ。確かにノックもせずに急に開けた上裸を見たのは俺が悪かった。でもだ!母さんも母さんだからな!?先に言っといてくれよ!
俺はしばしドアの前で呆然としていた。結衣がもう部屋に行ったことにも気付かずにそのまま30分ほど呆然としているのだった。
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