第3話
「··········」
下に降りると既に結衣が席に座っていた。·····こちらを睨みつけながら。「よ、よお·····」
「··········」
く、くそ。話しかけないでオーラをバリバリ感じるぜ。だけど、ここで負けたら兄として負けな気がする。俺は負ける訳にはいかないのだ。
「最近、学校でお前を見かけるけどなんか人気者みたいだな、あはは·····」
やばい。つらすぎる。母さんは母さんで笑いながらテレビ見てるし結衣は結衣で俺の事なんて気にかけてないみたいで飯食ってやがるし。くそぉ·····。
「最近、学校どうだ?楽しかったりするのか?」
「··········」
ほら、まただよ。なんで俺はこうまでしてこいつに話しかけているのだろう。意味がわからなくなってきた。
「·····ねぇ」
すると、結衣がようやく口を開いた。ここまでの効果だろうか。
「な、なんだ!?」
「話しかけないで」
·····そうかよ。じゃあ、もう知らないからな!
「じゃあ、ごちそうさま」
そう言うと、結衣は食器を下げお風呂に入ると言ってリビングから出ていった。
「·····ほら、やっぱりだめなんだよ。母さん」
俺は母さんに話しかける。先程からずっとテレビを見ていた母さんだったがこの時だけは少し悲しそうな顔をしていた。
「·····なんでかしらね」
「なにが?」
「·····いつの間にあんた達そんな仲悪くなっちゃったのかしら」
·····そんなの知らないよ。俺だってこうなりたかったわけではなかった。でも、いつの間にか·····こうなっていたんだから。
「まあ、これからも話しかけてみるよ。そのうちまた反応示すかもだしさ」
「そうね。じゃあ、これからも仲良くなれるように頑張りましょう」
·····まあ、その一言は余計だったけどな。別に俺はあいつと仲良くしたいとは思っていない。そもそも無理だと思ってるし。でも·····まあ、少しは話したいというのは心のどこかにはあるのだろう。だから、話しかけるのだと思う。
「じゃあ、俺も上に行くから」
「あ、上行く前についでにコンビニ行ってきてくれない?明日の朝食用のパンが切れちゃったのよ」
「ああ、じゃあ行ってくるわ」
俺は1度部屋に向かい財布を手に取るとまた下に向かった。
「じゃあ、行ってくる。他に欲しいものなんかある?」
「そうねぇ·····、じゃあ新発売のアイスでも買ってきて」
「一番安いやつなw」
ハーゲンなんて高いのをいちいち買っていられるか。高校生のお小遣い事情なめんなよ。
「せめてそこは2番目に高いのにしといてー」
なんという言い分だ。それならせめ小遣いを増やして欲しい。まあ、そんな贅沢は言わないがな。
「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
玄関を開けると外の寒い風が俺の体を吹き付けていく。俺はコンビニに向かって走り出した。
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