第5話

「はぁ·····」

チャプン·····

ゆったりと湯気が漂う室内で俺は方まで湯船に浸かりながら考え事をしていた。その考え事の内容は当然·····先程の遭遇してしまったことだ。別に結衣の裸を見たからと言ってどうこうするわけではない。そもそも俺はあいつを女として見てはいない。

「·····悪いことしちまったな」

でも、いくら女として見てなくても思春期の、しかも仲の良くない妹の裸を見てしまった。それは、あいつにとってもとても辛い事だったんではないだろうか。

「やっぱり、謝らなきゃだよな·····」

でも、話を聞いてくれるだろうか。また無視されて終わりになってしまったらどうしよう。俺はこのまま覗き魔の変態として妹に勘違いされたまま過ごすことになるのか?そんなのは嫌だ!いくらなんでもあんまりだ!

「そうと決まれば·····!」

勢いよく湯船から立ち上がると俺は急いで着替え妹の部屋へと向かった。

ドンドンドン!

「結衣!話があるんだ!開けてくれ!」

ドンドンドン!

「聞こえてるのか?結衣!」

バシン!

「づぁ!?」

ゴロゴロゴロ·····ッ

「·····近所迷惑って言葉を知らないの?」

部屋の中からかなり機嫌の悪そうな結衣が出てきた。と、とりあえず出てきてくれてよかった。だが妹よ。開ける時はせめて一言声をかけてはくれまいか?

「で、なんの用」

大丈夫の一言もないのか。まあ、仕方ないか·····。

「さっきはすまなかった!」

俺は結衣に向かって頭を下げた。今までにないくらい深くだ。

「··········」

しばらくの間結衣は俺の事を見ていたが少しすると興味がなくなったかのように部屋へと戻ろうとした。

「お、おい?」

「·····帰って」

パタン·····

·····そうしてまた妹の部屋のドアは固く閉まってしまったのだ。

「·····まだ怒ってた、よな」

やっぱりそう簡単には許してはくれないか。そうだよな。·····大っ嫌いな兄に自分の裸を見られたんだから。

「·····どうしたもんかな」

もうこうなっては結衣はきっと俺の話は聞いてはくれないだろう。明日また出直すか·····。

「部屋に、戻るかな·····」

風呂に入って少ししたら急激に眠くなってきた俺は部屋に入るなりすぐに寝てしまったの多々。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る